ITファシリティ事業のシュナイダーエレクトリック(旧エーピーシー・ジャパン)は、従来の主力商材であるUPS(無停電電源装置)に加え、冷却システムやセキュリティ環境監視など、徐々に製品のポートフォリオを拡大し、データセンター(DC)向けのビジネス展開を加速化している。今年1月に同社のトップに就任したアルノ・モンディ社長は、電力事情のひっ迫に伴うエネルギー管理の特需を受けて、小規模から大規模までのDCをターゲットに据え、積極的な攻勢に出ている。
DC向けビジネス展開に注力する
──御社はこの2月、DC向けのソリューション展開の強化を目的として、1次代理店を通さずに、御社が直接2次代理店を支援するパートナープログラムを開始しました。立ち上げからまだ日が浅いのですが、プログラムにどのような手応えを感じておられますか。
モンディ プログラムは、2月末に登録がスタートしたばかりです。現段階で、いくつかの会社と詳細の話を進めています。
まず、このプログラムを設けた背景を説明させてください。当社は、前身であるエーピーシー・ジャパンとして、これまでもパートナー向けの支援策を講じて、およそ1万社の販売店を獲得してきました。この1万社のうち、販売ボリュームが大きい数百社の重要パートナーを抱えています。しかし、販売パートナーの大半は、今まで主に私どものUPS製品を取り扱ってきたこともあって、分野が異なるビジネスに不慣れな面があります。したがって、複雑なDC向けソリューションの提案もできるよう、技術支援などが必要になるとみています。そこで、今回のプログラムを立ち上げました。これから、オンライントレーニングを行ったり、当社のハイタッチ営業部隊がとってきた引き合い情報をパートナーと共有するかたちで、販売代理店の提案力の向上を推進していきたい。
当社は、「APC」のブランド力が強く、UPSの有力メーカーとして広く認識されていると思います。ここ数年は、UPSの事業展開に注力しながら、仏Schneider ElectricとAPCのビジネス統合をきっかけとして、冷却システムやセキュリティ環境監視、統合管理ソフトウェアなどを投入し、幅広い製品のポートフォリオを揃えてきました。これを前面に押し出して、DC向けの事業展開を強化したい。そのためにも、今回のパートナープログラムが最も重要な取り組みの一つとなります。今後は、販売パートナーに当社の製品をそのまま売っていただくことにとどまらず、シュナイダーエレクトリックの製品をパートナー各社がもつ製品と融合し、共同ソリューションの展開を本格化していきたいと考えています。
──昨年の東日本大震災以降、DC需要が活発に伸びていると思います。DCの需要拡大は現時点で、御社のビジネスにどのようなインパクトを与えているのでしょうか。
モンディ 震災だけではなく、クラウドコンピューティングの普及も日本のDC市場を活性化する働きをしているとみています。当社のDC向けビジネスについていえば、今のところ横ばいで推移しており、まだそれほど伸びていないというのが実状です。しかし、日本は電力事情がひっ迫して、DC内のエネルギー管理を中心に、シュナイダーエレクトリックがもつソリューションの需要が確実に高まっている。市場のポテンシャルが大きいと見込んで、期待を寄せています。
一つの例を挙げましょう。日本政府は、再生可能エネルギーの普及を推進しています。これは私どもにとって、大きなビジネスチャンスとなります。日本ではまだ展開していませんが、当社のフランス本社は、この10年間、再生可能エネルギー分野でいろいろな企業を買収したり、業務提携を行ってきたので、再生可能エネルギーの関連製品をたくさんもっています。今後、これらの製品を、一つひとつ日本市場で発売したい。再生可能エネルギーをはじめとして、UPS以外の分野に注力し、事業を拡大する方針です。
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