「APC」ブランドでUPS(無停電電源装置)や冷却システムを展開するシュナイダーエレクトリック(アルノ・モンディ社長)は、データセンター(DC)向け事業の拡大に取り組んでいる。このほど、提案力の向上を促進する新しいパートナー支援プログラムを立ち上げた。UPSだけでなく、DC向けソリューションを包括的に展開するパートナーを育てるのが狙いだ。
シュナイダーエレクトリックは、2月末にクローズドで開いたパートナー向けイベントで支援プログラムを発表した。ディストリビュータ(1次販売店)を通さずに、リセラー(2次販売店)を直接サポートする制度として、同社では初のプログラムだ。立ち上げの指揮を執った事業戦略室の鎌原正幸室長は、「このプログラムで2次販売店と緊密なパイプをつくることによって、市場が活性化しているDC向け事業を強化する」と、狙いを語る。
フランスに本社を置くシュナイダーエレクトリックは、UPS大手の米APC社を買収し、「APC」ブランドでUPSをはじめとするITファシリティ系製品を展開している。製品ポートフォリオは、UPSに加え、冷却システムやサーバー収納用のラック、セキュリティ環境監視、統合管理ソフトウェアなどと幅が広い。同社は今、グローバルでのDC需要の拡大を受け、UPSを基盤事業としながらも、幅広い製品群をフル活用して、DC向けの包括的なソリューション展開を中核とする新規ビジネスの拡大に力を入れている。
2010年のグローバル売り上げ(約190億ユーロ)で第5位に入る日本法人は、APC時代から築いてきたおよそ1万社の販売網をもっている。しかし、「当社の販売パートナーは、小型UPSを中心に販売する会社が多く、冷却システムを含めた複雑なDC向けソリューションを展開できるパートナーはまだ少ない」(鎌原室長)という課題を抱えている。そこでシュナイダーエレクトリックは、今回のプログラムで、大学や病院の比較的大きいサーバー室から大規模DCを相手にする大口案件まで対応できるよう、販社の提案力の向上を支援することに重点を置いている。
プログラムは、「Registered」(登録)を第一段階として、「Select」「Premier」「Elite」の三つのカテゴリを設けている(図参照)。パートナーの各レベルに合わせて、オンライントレーニングや引き合い情報の提供といった内容のサポート策を用意する。大手DCを販売の対象とする最上位の「Elite」パートナーになるためには、受注金額が年間2000万円という条件が課されている。シュナイダーエレクトリックは3年後をめどに、10~20社の「Elite」パートナーの獲得を目指す。
同社はこれまで幅広い商材を揃えてはいたものの、その販売体制が十分ではなかった。今回のプログラムによって、DC向け展開に強いパートナーを育てて、市場ニーズのある自社商材のポテンシャルをフル活用していく構えだ。DC事業の目標は「毎年、2ケタの成長」(鎌原室長)だという。
競争の激しいDC市場に、また一つ、強力なプレーヤーが現れた。(ゼンフ ミシャ)