日本の中堅・中小企業(SMB)のIT化は、世界に比べて遅れている。この状況を打ち破る目的で誕生した「ITコーディネータ(ITC)制度」だが、有資格者は増えてはいるものの、全国にITCの活動が波及し、SMBの間に「IT経営」が進展するという成果は得られていない。制度自体が岐路に立たされている折、富士通グループ内でITCを積極的に活用し、成功体験が豊富な播磨崇氏が1年前、ITコーディネータ協会の会長に着任した。「まずは経営者に知ってもらう」と、“見える化作戦”を断行。現場の意見を徹底的に聞き、改革へ邁進している。
経営者にITCを知ってもらう
──ITCA会長に就任する前、富士通のグループ会社でITコーディネータ(ITC)を積極的に活用しておられました。その経験をどう生かしますか。
播磨 ITベンダーに所属している時のITコーディネータに対する見方とITコーディネータ協会(ITCA)の会長としての見方には、立場のギャップがあります。ITベンダーに在籍していた頃は、既存顧客に対するサポートの強化や新規顧客開拓の役割としてITCを捉えていました。一方、ITCA会長としては、SMBの経営トップの方々に“気づき”を与え、ITCAが提唱する「IT経営」にもとづいて事業の発展を目指すことを支援することが重要になります。
──今度は、マクロの視点でITCの活動を支援する立場になったわけですね。
播磨 ITCAは、バーチャルな企業体といえます。ITC個人やITCの集合体である「届出組織」をうまく支援し、ITCがよりよい活動ができる環境をつくる役割があると思っています。
──富士通北陸システムズの社長時代は、なぜ、社員に対してITCの資格取得を推奨していたのですか。
播磨 富士通北陸システムズの社長時代には、管理職以上全員にITCの資格を取るように促しました。その理由の一つは、管理職以上の人材育成です。管理職は先行き、定年を迎える。最近では65歳程度まで仕事を続ける人がほとんどになりました。チームで働いていた時と異なり、定年後は「個」で稼ぐことになる。
ところが、システムエンジニア(SE)は、与えられた役割をこなすだけだった。定年後に「個」で働くとなると、地域のなかで横の連携をしつつ仕事をしなければなりません。もっといえば、地域では、IT技術をもつITCのような支援が必要とされています。現役時は顧客開拓・支援に生かし、退職後は地域支援に貢献することができるという構図をつくりたかったのです。
──富士通エフサスでもそうしていましたが、富士通北陸システムズとではITCの役割が異なりますね。
播磨 富士通エフサスは、時代の流れに応じて、従来の保守ビジネスをサービスに移行する必要がありました。サービスビジネスにシフトすると、今までカスタマエンジニア(CE)として仕事していた人財がサービスの世界に入る必要があるわけです。保守人員としてではなく、ペラ一枚でも提案書を持参し、顧客先を訪問することになります。そのようなノウハウをITCの「プロセスガイドライン」に学んだのです。
──播磨会長が手がけられた富士通のグループ会社は、ITCの理論を取り入れて、何が変わりましたか。
播磨 ITベンダー内の社員は、会社の仕組みのなかでスキルアップし、そのスキルを生かして市場を開拓することを目指している。富士通北陸システムズに、改めてITCの資格取得で何が変わったかを聞いてみました。すると、意識が変わっていることが、はっきりわかりました。従来は、顧客から課題提起され、それに対してITで解決することの強みを生かして商談を獲得していた。ところが、ITCの「プロセスガイドライン」にある通り、上流工程から学ぶことで、「自分たちが自ら提案する必要がある」と、変容していたのです。
前々から、どのITベンダーも、このような提案活動を行う必要性を感じていながら、きっかけがつかめないのでしょう。大手企業に対しては、SEは受け身になりがちですが、地域に関しては経営者と密接になるので、それができたのかもしれません。
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