ITコーディネータ協会(関隆明会長)は、6月18日、東京プリンスホテルで2010年度ITC通常総会を開催した。今年は創立10周年の節目の年にあたり、中期5か年計画を策定。初年度の今年を次年度以降再成長するための「弾込めの年」とする考えだ。ITCは、新規資格取得者が減少傾向にあるなど、さまざまな課題が山積している状況だ。協会自らが市場開拓を推進するなど、強化施策を打つことで現状の打開を図る。
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| 関隆明会長 |
ITCは新規資格取得者が減少し、資格更新率も若干ながら減少している。ITC協会の前年度事業収支は6600万円の赤字で、今年も4900万円の赤字を計上するなど、マイナスが続いている。協会は、こうした数字にも現れている停滞傾向から脱却し、新しい成長軌道に乗るべく、前年度半ばから向こう5年間の中期計画策定に取りかかった。関隆明会長は「今年度は今までの延長線上ではなく、中期計画を年度ごとの事業計画に落とし込み、成果を上げていく初年度だ」と力強く語った。
中期計画では、(1)ITコーディネータ制度の持続的な発展(2)ステークホルダーとの戦略的連携の強化(3)協会をハブとする積極的なITCビジネス・新活躍領域の創出(4)求心力のある協会運営体制の構築(5)IT経営/中小企業に関する調査研究施策提言を強化する──などの施策を掲げている。
実現への道筋として関会長は、第一に実践力強化に重点を置いて刷新を図ったITCの新知識スキル体系によって、時代に合致したITコーディネータ育成し、社会から評価されること。第二に、中小企業のIT経営を強力に推進する中核として要求を先取りし、あわせて国への提言力を強化すること。第三に、SaaSクラウドによるIT利活用のパラダイムシフトをしっかり捉え、IT経営化の壁を乗り越えていくこと。第四に、協会の運営体制と財政基盤の強化、などを挙げている。
協会は、中計初年度の10年度を、ITコーディネータ事業が11年度以降再成長するための「弾込めの年」と位置づけている。今年度は、ITコーディネータの育成強化策や、ユーザー・ベンダー・ITコーディネータのパートナー連携強化策などを打ち出している。
注目すべきは、協会が直接マーケットとの接点をもち、ITコーディネータの市場創出を推進するという点だ。協会が主体となって、マーケット、顧客との接点を拡大し、ITコーディネータへのユーザーニーズや要望、評価・課題の把握を踏まえ、四つの施策の効果や事業性の評価検証を行うとしている。
その具体的な方法は、第一にビジネスマッチングを通じたITコーディネータのビジネス機会の創出。第二にITベンダー向けビジネス(人材育成支援、営業支援、IT経営支援)の展開。第三に経済産業省と中小企業庁の施策を活用した支援スキーム形成・ビジネス創出、第四に自治体を対象とする新ビジネス分野でのITコーディネータ人材育成・ビジネス活動支援だ。この四つの具体的行動によって、協会は2.5億円規模のITコーディネータ市場を創出し、事業収入の一部を活動資金に充てる新たなスキームを展開するという。
本当に2.5億円の市場創出はなるのか。5か年計画を主導する協会の手腕が問われる。(鍋島蓉子)