スペシャリスト「ゴールドITC」育成へ
──そうした成功体験をおもちですが、ITCAの活動にどう反映してきたのでしょうか。
播磨 ITCの方々は、SMBの経営者との接点や、経営者からみたITCの認知度が、まだまだのところにあります。「IT」が頭についているから、経営者は構えてしまうのかもしれません。その壁をいかに取り払うかということに努力してきました。
──まずはITCの数を増やし、この多くの“伝道師”が認知度を高める。いまでも、多くの「届出団体」が「経営者セミナー」というかたちでセミナーを開いていますが、それらを加速するということですか。
播磨 基本的には、そうした地道な活動をすることでしょう。私が会長を務めるITCAや、商工会議所、IT業界団体、ITベンダーの任意団体である「中小企業支援SaaS利用促進コンソーシアム(SPCS)」のなかで、商工会議所と連携し、関東地区で成功事例ができています。経営者の課題を解決することを打ち出したタイトルをつけたセミナーに、多くの経営者に来てもらいました。
そうした活動を全国展開する。もう一つ、ITCA自身が、経営者を集めるためのセミナーの企画を商工3団体などと連携して企画を打ち上げる。もう一度、原点に立ち返り、「ITコーディネータとはなんぞや」ということをわかりやすく説明できるようにしたい。私はこれを“見える化作戦”と呼んでいます。
──一方で、資格を取得しにくいという制度自体の改革も必要と感じますが……。
播磨 そうですね、ITCの認知度を高める活動と並行して、今年4月に資格研修制度を改革しました。この改定の趣旨は、資格取得に必要な費用が高額で、取得までの期間が長いという声などを受けて、安価で短期間にしました。また、ポイントは、より実践力を身につけるための「ケース研修」の中身を抜本的に見直したことです。従来は、独立系ITCや企業内ITC、あるいは顧客対象規模別になっておらず、統一した内容で実施していた。これを、「プロセスガイドライン」を学ぶコースは内容を深掘りして共通に実施し、これ以外に大企業向けとSMB向けの二つのコースに分けました。
──播磨会長が就任する以前、「スーパーITC」ともいえる代表格の人財を育てる構想もありました。
播磨 そうです。上位レベルのITCも、見える化する必要がありますね。経験値によってITCのスキルも異なりますし、事実、支援機関からも「この人なら大丈夫ですよ」と、お墨つきの判断基準があって企業にITCを派遣したいという声も上がっています。ITCAでは、「ゴールドITC(仮称)」と呼んでいますが、ハイレベルのITCを認定するなどして、企業から見えるようにして、地域のITCコミュニティを育てる役割を担ってもらうようなことも検討しています。
・お気に入りのビジネスツール イタリアの筆記具メーカー「Montegrappa(モンテグラッパ)」製の万年筆。キャップを回して開ける方式で、重厚感のある筆記具だ。富士通北陸システムズの社長を退任し、富士通本体の役員に異動する際、社員からプレゼントされた。価格は不明だが高価な逸品だろう。
眼光紙背 ~取材を終えて~
富士通エフサス社長時代に、「KEY PERSON」に登場してもらった。そのインタビューで印象的だったのは、第三者機関による調査で、「働きがい」を感じる社員が少ないという結果が出たことにショックを受け、トップダウンの経営スタイルをやめたということだ。
とことん現場にこだわる人──。この時から、そんな印象を抱いていた。ITベンダー現場のトップからITコーディネータ協会の会長職は、こなす業務の質が異なる。しかし、会長に就任してから、徹底的に現場を知ろうとし、それにもとづいて積極的に改革を断行してきた。
3か月ほど前には、当社を訪れている。「挨拶回り」の一環かと思いきや、ITコーディネータの現状をどう思っているか、率直に意見を聞きたいとのことだった。恐らく、内部だけでなく外部から見た視点、またメディアの意見も参考にしようとしたのだ。播磨会長の言う“見える化作戦”、ぜひ実現してほしい。(吾)
プロフィール
播磨 崇
播磨 崇(はりま たかし)
1945年5月生まれ、67歳。68年、早稲田大学理工学部機械科卒業後、同年、富士通に入社し、コンピュータの製造ラインの自動化に従事。98年には、富士通ビジネスシステム(現・富士通マーケティング)のシステム部門担当常務。2001年には富士通北陸システムズの社長に就任。その後、05年に富士通の執行役員常務、08年に富士通エフサスの社長といった要職を経て、11年6月にITコーディネータ協会会長に就任。
会社紹介
特定非営利活動法人ITコーディネータ協会(ITCA)は、1999年6月に通商産業省(現・経済産業省)の産業構造審議会での提唱の趣旨を踏まえて2001年2月に設立。経営とITの両面に精通し、企業経営に最適なIT投資を支援・推進することができるプロ「ITコーディネータ(ITC)」を育成している。2012年3月末現在でITC資格の取得者は累計9893人で、現資格保有者が6337人。今年度末(13年3月)までに累計1万人を超える見通し。有資格者の約65%がITベンダーに所属する「企業内ITC」で占められている。