東北の被災地での復興支援を手がける任意団体「ITで日本を元気に!」の佐々木賢一代表(=トライポッドワークス社長)は、地元の活性化をミッションとする人物だ。東日本大震災が発生してからの2年間、幅広い人脈と行動力を生かし、IT業界のキーパーソンたちで構成する支援コミュニティをつくってきた。今後は、地元のITベンチャーへの支援を方針に掲げ、復興を越えて、東北の長期的な発展を目指している。
[震災直後]仙台市内の状況を発信
──佐々木さんは震災から1か月後、2011年4月11日に「ITで日本を元気に!」を立ち上げられました。その経緯を聞かせてください。 佐々木 きっかけは「情報がない」ことです。震災直後に、津波が押し寄せた沿岸部の映像がテレビでたくさん放映されましたが、仙台市内はどうなっているかについては、ほとんど報道がなされませんでした。
仙台市内は電話が通じず、道路が遮断されて物流が止まっている状況だったのですが、実は被災の翌週にはビジネスを再開した企業が多かったのです。私は、地元のIT企業を回って、様子をうかがいました。よく聞いたのは、「情報が途絶えているので、全国の取引先から『事業が停止している』と思われていて困っている」という声でした。
そこで、3月17日、震災が起きた翌週の木曜日に、Facebookでの情報発信を開始しました。地元IT企業の社員やオフィス内の状況を写真に収め、ビジネスを継続している様子をFacebookで公開しました。約1か月で18万ページビューのアクセスを集め、サイトで企業同士も情報交換をし始めたという大反響を呼びました。
「ITで日本を元気に!」の立ち上げに至ったのは、4月にボランティア活動で南三陸を訪れたときのショックがきっかけでした。
南三陸で電気が回復したのは、2011年の夏。私が訪れた4月には、避難所も含めて夕方から町全体が真っ暗になっていました。私自身も、震災後の2日間足らずですが、仙台市内の避難所で生活をしました。南三陸で、町のほとんどの人が電気も灯らないなかで避難所生活を強いられていることを目の当たりにし、その苦難に対して何か役に立てないかと考えました。
私は11年間、日本オラクルで働きました。リーダーとして東北支店を立ち上げ、何もないところからパートナーとの関係を築いたり、お客様を開拓することに取り組んできたという経歴をもっています。
今回も、同じ感覚で動こうと思いました。重要なのは、東北を東京など外部とリンクさせることです。私はそう考えて、東京と仙台のIT企業の経営者やマーケティング部長など、会社を動かせる人に声をかけました。早速、30人くらいのメンバーが反応してくれて、任意団体のかたちでその週から活動を開始しました。
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