「正しいことを実行する」。日商エレクトロニクスの河村八弘社長は、自らの経営哲学をこう表現する。双日グループのICT(情報通信技術)インテグレータである同社が取締役を大幅に入れ替え、エンジニアリング本部長の河村氏がトップに就任してから半年。河村社長は、米国の最新技術をいち早く日本で展開する「イノベーション」のDNAを保持しながら、「セリングフェーズで稼ぐ」という強い営業体制を築くための仕組みづくりに取り組んできた。2014年は、それを実行に移し、提案活動に注力することによって、国内外でビジネスの拡大に拍車をかける。
技術ノウハウ×外資系経験を改革に生かす
──2013年6月、技術畑を歩んでこられた河村さんが日商エレクトロニクスの社長に就任されました。営業力の強化を全社の課題にしているとうかがっていただけに、異例の人事だと思います。河村さんのこれまでのキャリアも含めて、社長就任の背景について聞かせてください。 河村 私は、ちょうど30年前に新卒採用で当社に入社して、技術者としてバリバリ仕事をしてきました。そんな人間が、なぜ社長に選ばれたかといえば、技術の知識に加えて、数字をみるビジネスマンとしての経験をもっているからではないかと推測しています。実は、私はこの30年間、ずっと日商エレクトロニクスに在籍していたわけではありません。ストレージを展開するEMCジャパンに転職し、同社で外資系ベンダーならではのビジネスのやり方を身につけました。
おっしゃる通り、当社は営業力の強化を課題としています。しかし、その課題を解決するには、技術に長けていて、米国の最新テクノロジーを誰よりも早く日本で提供するというわれわれのDNAを大切にする必要があると捉えています。2010年、かつての上司から「日商エレに戻ってこないか」と声がかかりました。私は、自分のベースがあるこの会社に再度入社することを決断し、技術部隊を統括する職に就きました。私自身は、こんなふうに日商エレクトロニクスに根づいていて、技術に精通しながらビジネスを重視するというキャリアを生かして、セリングフェーズで稼ぐ体制を築き、当社の事業拡大をリードしたいと考えています。
──EMCジャパンでは、どのようなことを学ばれましたか。 河村 外資系は社員各人の仕事の範囲がはっきり決まっていて、それを踏まえて各自がシステマチックに仕事をこなすのが特徴だと思います。また、お客様に向けてマーケティングのメッセージを発信して、マーケティング活動を受注の拡大に直結するのも外資系ならではのやり方だと実感しました。
EMCジャパンにいた頃は、「お客様にとって何ができるか」というテーマで解決策を考えることを胆に銘じました。この考え方は、お客様がICTに対して価値の創出を求めるようになっている現在、まさに武器になると確信しています。
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