日本ヒューレット・パッカード(日本HP、小出伸一社長)と日商エレクトロニクス(日商エレ、河村八弘社長)は、高価格・高性能で「ストレージのフェラーリ」と呼ばれる「HP 3PAR」を、プライベートクラウドの基盤として、一般企業に売り込もうとしている。「HP 3PAR」について10年間の構築実績をもつ日商エレが中心となり、販売パートナーを支援する体制を築くことによって、3年で3ケタの売り上げを目指す。データ活用の需要にけん引され、急成長するプライベートクラウド市場。「HP 3PAR」を活用したパートナーによるソリューション展開が開拓のカギを握る。
「HP 3PAR」は、クラウド環境に最適化した高価格・高性能のストレージだ。2010年、米ヒューレット・パッカード(HP)が米3PARを買収して、現在、自社製品として展開している。日本では、双日グループのICT(情報通信技術)インテグレータである日商エレクトロニクスが買収前の02年から3PAR製品の販売を手がけてきた。日商エレは、大規模なデータセンター(DC)で使う通信キャリアを中心に、ハイエンド市場でこれまで100台以上の実績を積み上げてきている。
国内のプライベートクラウド市場が急拡大していることを受けて、日本HPはプライベートクラウドの基盤として、一般企業にも「HP 3PAR」を納入しやすいよう、12年12月、ミッドレンジモデルの「HP 3PAR StoreServ」を投入した。スモールスタートでビッグデータ活用に乗り出すことができるツールであることを訴求している。調査会社のIDC Japanは、国内プライベートクラウド市場は13年の4627億円から、17年までに1兆4129億円に成長することを予測。こうした動きを背景に、日本HPは「HP 3PAR StoreServ」の販売体制づくりに力を入れている。
日本HPは当時、3PARのエンジニアを十分に抱えていなかったので、自社で販売パートナーへの技術サポートを行うことが難しかった。そんな状況にあって、「HP 3PAR StoreServ」の拡販に中核的な役割を果たすのは、10年間で3PAR構築の腕を磨いてきた日商エレだ。日商エレは日本HPと連携し、今年、販売のエコシステムをつくるための「3PARパートナーアライアンス」を発足した。現在、大手システムインテグレータなど、18社のパートナーを獲得している。

日商エレ
高塚俊樹
常務執行役員 「3PARパートナーアライアンス」で日商エレが提供する支援策は、パートナーがソリューションの検証やデモンストレーションを行う環境を用意する「Cloud Ready Center」(東京・豊洲)が柱となる。「Cloud Ready Center」の活用によって、ソリューションを実現する時間の短縮を図る。日商エレはこのほかにも、見積もり作成など営業支援や、データ移行サービスといった技術サポートを提供している。
超ハイエンド製品で、「ストレージのフェラーリ」とも呼ばれる「HP 3PAR」。これまで直販で単体として展開してきた日商エレは、一般企業のニーズに応えるソリューションとして提供することができるのか──。パートナーの動きが「HP 3PAR StoreServ」の事業を拡大するうえでのカギを握る。日商エレ ソリューションパートナ営業本部長の高塚俊樹常務執行役員は、パートナー各社に対して、「バックアップなどを追加して、SIerらしい展開をしてもらいたい」と要望している。

ジャパンシステム
日浦武仁
西日本・中部事業部長 パートナー各社のなかでも、中堅規模のSIerであるジャパンシステムの動きが注目される。同社は、「3PARパートナーアライアンス」に参画し、この7月に、3PARの導入コンサルティングと構築支援サービスの提供を開始した。ソリューション提供の強化に取り組んでおり、「3PARをその中核商材にしたい」(西日本・中部事業部長の日浦武仁氏)と考えている。コンサルと構築支援によって差異化を図り、一般企業にとっての導入ハードルを下げようとしているのだ。ジャパンシステムの動きがユニークなのは、「競合の数が首都圏よりも少ない」(日浦部長)とみる西日本から市場開拓に取り組むという点だ。西日本で提案活動する部隊を走らせ、ストレージの置き換え需要を狙う。日浦部長は、「データの移行サービスも提案したところ、感触がいい。先日、最初の案件を獲得して、現在も3件ほど動いている案件がある」と、確かな手応えを感じていると語る。
パートナーの活発な活動に、日商エレの高塚常務は満足げだ。「今年度、通期で20億~30億円の売り上げを見込んでいる」という。今後、パートナー支援を加速し、3年間で3ケタの規模への引き上げに動く。(ゼンフ ミシャ)