海外売り上げ1年前倒しで達成
──エヴェリスグループが加わることで、2016年3月期に海外売上高3500億円を達成するという中期経営計画は、1年前倒しで実現できるのではないでしょうか。 岩本 今期(2014年3月期)のグローバルビジネスの売上高が2900億円の見込みで、エヴェリスの年商が約5億9100万ユーロ(約820億円)ですので、単純合算ベースですが、計画より1年早い来年度(2015年3月期)には、目標の3500億円は超えられる見通しです。エヴェリスとは別に、SAP製品に関する戦略策定やコンサルティングを強みとする米オプティマル・ソリューションズ・インテグレーション社もグループに加わってもらいます。この会社の年商は約1億5300万ドル(約160億円)、社員数約950人ですので、北米でのビジネスの一段の強化が期待できます。
──国内ビジネスはいかがでしょうか。今年度は不採算案件で営業利益が期初予想値に対しておよそ250億円も吹き飛ぶ事態となりました。 岩本 国内の景況感の改善に伴いIT投資が増える傾向にあるなかで、当社は国内での受注活動を積極的に展開しました。当然、ライバル他社も同様に攻勢をかけてきますので、コストオーバーランのリスクを負いながらチャレンジすることも必要です。安全圏内だけで仕事をしていては受注できません。当社は売上高の0.3%に相当する約40億円をチャレンジ費用として準備していましたが、今期はさまざまな事業部門が一斉にチャレンジをかけたため、途中でブレーキがきかなくなったというのが実情です。責任をとって、私を含む取締役は役員報酬を10~20%返上します。
──不採算案件は主に国内で発生していますが、国内ビジネスに何か歪みがありませんか。 岩本 これはユーザーから一括請負でシステム開発ができるかどうかの違いが大きい。対照的なのが米国の企業で、ユーザーの社内に優秀なプロジェクトマネージャーがいて、システム開発もインソースで行う比率が高い。ITベンダーなどのアウトソースを活用するにしても、下流工程の一部を出すなど、限られる傾向があります。ユーザーにとってのリスクは高くなる反面、ITベンダーのリスクは低い。日本のユーザーはアウトソース活用型が多く、プロジェクトマネージャーも含めてITベンダーが一括で請け負うことになりますので、失敗したときのリスクは大きいものがあります。
「構造問題」をどう解決するか
──国内で主流の一括請負型は、海外市場では通用しにくいということでしょうか。しかも一括請負型は不採算案件化するリスクも高いとなると、構造的な問題を抱えているといえませんか。 岩本 だからこそ、当社はソフト開発のエンジニアリングを進める「TERASOLUNA(テラソルナ)」をはじめとする仕組みやツール開発に積極的に投資しているのです。プログラムソースコードの自動生成やテストの自動化、既存システムの自動解析などで構成するものです。これによって、従来の労働集約的なシステム開発と決別し、エンジニアリング化を目指します。開発コストが削減できるばかりでなく、属人的な部分も排除できますのでリスクも軽減できる。一方、海外では、これまで統合基幹業務パッケージソフトのSAPを扱うITベンダーやSIerに狙いを定めるかたちでM&A(企業の合併と買収)を手がけてきました。今回、当社グループに加わってもらう米オプティマルもSAP構築を得意としています。
──情報サービス業界では、ソフト開発のエンジニアリング化、脱労働集約におおむね共感できても、実際は「うまくいかないだろう」という懐疑的な見方も少なくありません。 岩本 ソフト開発の歴史を振り返ると、過去、何度も失敗を繰り返しており、当社も、もしかすると失敗するかもしれない。しかし、やらなければいつまでもできないし、いつかは海外の有力ベンダーに先を越されるだけです。まだ完璧とはいかないまでも、テストやソースコード生成、既存システムの分析など部分的に成果が出始めています。ここで削減できたコストはユーザーに還元するとともに、当社の利益にもなり、次の研究開発費に充てることも可能です。
──NTTデータの国内外のビジネススタイルも大きく様変わりしそうですね。 岩本 これまで当社は、M&Aなどを通じてグローバルカンパニーへの道を歩んできました。日本のSIerとして、初めて世界のITサービスベンダートップ5入りが視野に入ってきたものの、しかし、このままでは次のステージへは行けません。まだ構想の段階ですが、グローバルカンパニーとしての第二ステージは、世界のユーザーにとって「NTTデータといえば○○に強い会社だ」と、すぐに連想してもらえるようになることです。IBMやAccenture、富士通あたりは各国・地域でそれなりのイメージをもたれていますが、残念ながら当社はまだそれが弱い。世界のユーザーに「さすがはNTTデータだ」と評価してもらえるように変革を進めていきます。

‘過去、何度も失敗を繰り返してきた。当社も、もしかすると失敗するかもしれない。しかし、やらなければいつまでもできないし、いつかは海外の有力ベンダーに先を越されるだけだ’<“KEY PERSON”の愛用品>全英オープンの公式カフス NTTデータが公式スポンサーになっている全英オープンゴルフの公式カフス。優勝杯の「クラレットジャグ」にちなんだ水差しの形をしており「カフスとしては珍しい細長い形がいい」(岩本敏男社長)という。
眼光紙背 ~取材を終えて~
日本のSIerは、部分的な受託ソフト開発から、ユーザーの情報システムを一括して請け負う「トータルソリューション」へとシフトしてきた。しかし、海外ではユーザーが主導してシステムを開発する「インソース方式」が主流で、日本的な一括請負方式は通用しにくい。そこでNTTデータがエンジニアリング化とともに打ち出した施策が、近未来の展望や技術トレンドを調査・研究し、ユーザーや業界に指し示す「Technology Foresight」の活動だ。
Accentureが強力な経営戦略コンサルティング部門をもち、IBMが世界のITビジネスのビジョナリーと称されるように、NTTデータも「当社ならではの知見や分析力によって将来の展望を示す」(岩本敏男社長)ことが求められるからだ。ソフト開発のあり方も、エンジニアリング化を協力に推進する。従来のSI業界にはなかった新しいITサービスを確立することができれば、NTTデータは名実ともに世界トップベンダーとして君臨するはずだ。(寶)
プロフィール
岩本 敏男
岩本 敏男(いわもと としお)
1953年、長野県生まれ。76年、東京大学工学部卒業。同年、日本電信電話公社入社。85年、データ通信本部第二データ部調査員。91年、NTTデータ通信(現NTTデータ)金融システム事業本部担当部長。04年、取締役決済ソリューション事業本部長。07年、取締役常務執行役員金融ビジネス事業本部長。09年、代表取締役副社長執行役員パブリック&フィナンシャルカンパニー長。12年6月、代表取締役社長。
会社紹介
NTTデータの今年度(2014年3月期)連結売上高は前年度比2.2%増の1兆3300億円、営業利益は同30%減の600億円の見通し。直近の海外拠点は世界34か国・地域、141都市、約2万9100人体制を確立している。2014年には、中南米に多くの拠点をもち社員数1万人規模の社員を抱えるスペイン・エヴェリスグループなどが加わることで、米州地域におけるビジネスが一段と拡大することが見込まれている。