ソフトバンクBBから分社・独立し、4月1日付で発足したソフトバンク コマース&サービス。ソフトバンクの創業事業であるIT流通を担う専門会社が誕生した。携帯端末卸売事業の世界大手である米ブライトスターがソフトバンクグループに加わったことで、流通事業の世界展開がいよいよスタートする。トップに就いたのは、国内IT流通を熟知する溝口泰雄氏。超高速のスピード経営で、モバイルを切り口に日本で圧倒的な存在感を維持しながら、世界に打って出る。
孫氏の「同じ流通じゃろ!」で動いた買収劇
──ソフトバンクBBから分社・独立することになった経緯を教えてください。 溝口 ソフトバンクBBのビジネスを区分すると、「ブロードバンドサービス」と「IT製品・サービスの流通」の二つになります。IT業界歴が長い人ならご存じと思いますが、IT流通事業は孫(正義氏)がソフトバンクで始めた最初のビジネスです。順調に伸ばしてきて、「ブロードバンドをやるんだ!」という、孫が発した2001年の大号令で、ブロードバンドサービスが加わりました。
ソフトバンクグループは、経営のスピードが驚くほど速い。私は、セイコーエプソンと日本IBMにも籍を置きましたが、この2社とは比べものにならないほどの速さで意思決定を行います。グループ会社のヤフーが「爆速経営」をスローガンに掲げることからも、それを感じてもらえると思います。「爆」とか「超」がつかなければダメ。並の速度では許されない文化が根づいています。
ソフトバンクBBの流通事業は成長を続け、年商は約2700億円、会社全体の人員も3000人を超えた。それにつれて、ブロードバンドサービス事業とは異なる機動力をもつ必要性も高まってきた。大きくなった組織をよりスピードを上げて経営するために、独立することにしました。
──携帯電話などモバイルデバイスの卸販売を展開する、世界的大手の米ブライトスターをソフトバンクが買収したことも、新会社の設立に踏み切った理由ですか。 溝口 ブライトスターは、世界55か国でビジネスを展開するディストリビュータで、年商は約6300億円の大手。私たちのビジネスとの相乗効果が見込めます。当社は世界に打って出るチャンスを得られ、ブライトスターは日本に進出する足がかりを得られる。
日本のビジネスはおかげさまで順調で、今後も伸ばす自信があります。ただ、伸びしろがあるのは、やはり海外。孫が「同じ流通(事業者)じゃろ!(売上高は)足したら1兆円じゃないか。行けー!」と。海外展開に弾みをつけるために、より身を軽くしたいという思いはありました。
ただ、誤解をしてもらいたくないのは、今回の新会社設立が、海外展開を加速させるためだけではないということです。分社・独立した効果を、必ず国内でも発揮します。日本のIT流通事業は、まだまだ伸ばせます。当社にとって、日本の流通事業は利益の源泉であることに変わりはありません。「海外、海外」とばかり書かれると、「国内の流通もしっかりやれ!」と、日本の流通事業で古くからお世話になっているパートナーの皆さんに叱られてしまいますからね。ここで、宣言させてください。日本の流通事業も伸ばします。ITと通信の融合、真のICTソリューションを提供することができるスタッフがいるディストリビュータは、当社だと自負していますから。
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