ピー・シー・エー(PCA)は、2014年12月、東京証券取引所市場第一部に市場変更した。水谷学社長にとっては、社長就任が決定したときからの悲願であり、感慨もひとしおのようだ。しかし、これはあくまでもスタートライン。中堅・中小企業(SMB)向けの業務ソフト市場でナンバーワンベンダーの座を奪取し、さらに大きくステップアップするための次のビジョンもすでに描いている。国産クラウド業務ソフトのパイオニアとしてのアドバンテージを生かし、さらなる飛躍を期す水谷体制第二章の展望を追った。
悲願だった東証一部上場
──まずは、東証一部上場の率直な感想を。 水谷 感慨深いものがありますよ、やっぱり。社長見習いとして副社長になったのが9年近く前のことですけど、そのときに経営者としての絵を描きました。当時の売上高は50億円ちょっとでしたが、100億円を超えたら一部上場しようと目標を決めて、それをどうやって達成するのか、ずっと考えてやってきた結果ですから。
──100億円という数字にはどんな意味が? 水谷 一部上場は無理にやろうと思えばできますが、いつ二部に指定替えになるかヒヤヒヤしているようでは情けない。ライバル会社に負けない競争力をもちながら一部上場企業として安定した成長を続けるためには何が必要かと考えると、例えばテレビCMは重要な要素なんです。消費税改正などで特需が見込まれる場合に一時的にメディア露出を増やすだけでなく、恒常的に自社の認知度向上のための施策としてテレビCMを打つには、最低100億円の売上高が必要だと考えていました。
──水谷社長が考える一部上場の意義とは? 水谷 いい人材を集めやすくなるということに尽きます。ソフト会社は人が財産で、製品の品質を上げることができるかどうかも人材次第です。しかし、業界には東証一部上場のライバル企業もいて、新卒採用で面接に来てくれた優秀な学生さんを他社に奪われてしまったという例もこれまで少なくない。これは本当に悔しいことです。
──なるほど。ただ、優秀な人材を集めたとしても、PCAの主戦場である中堅・中小企業向けの業務ソフト市場は成熟市場ですから、継続的に成長するのは簡単ではないように思えます。 水谷 クラウド業務ソフト「PCAクラウド」シリーズの売り上げが全売り上げの10%を超え、現在も年間1.4~1.7倍ものペースで成長し続けています。これは、オンプレミスのパッケージソフト販売では到底達成できない数字です。PCAクラウドの成功によって、新しいビジョンを描くことができたといっても過言ではありません。
──1万社のユーザー獲得をPCAクラウドの当面の目標とされていましたが、状況はいかがですか。2008年のリリース後、当初は伸び悩んだものの、ここ数年で加速度的に成長している印象です。 水谷 1万社達成は秒読みの段階に入ってきていますが、消費税特需の反動が業務ソフト市場を直撃している状態で、少し足踏みしています。これがなければ、この春には達成できそうだったのですが……。ただ、そんな逆風でも1.4倍もの割合で伸びているのがPCAクラウドの強さです。少なくとも来期中(2016年3月期)には必ず1万社を超えます。
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