Linux関連ソフト開発企業としてスタートしたHDEは、近年、クラウド領域に中心事業をシフトし、「Google Apps」「Office 365」「Salesforce」などのクラウドサービスの連携セキュリティソリューション「HDE One」をコア商材として、急成長している。クラウドセキュリティサービスの分野では、日本のトップベンダーに躍り出た同社が、次に見据えるのは、海外、とくにアジアの市場だ。小椋一宏社長に、さらなる成長への青写真をうかがった。
Office 365の浸透がターニングポイントに
──主力事業のHDE Oneがだいぶ好調のようですね。 小椋 今期(2015年9月期)に入ってから、とくに伸びが大きく、前期の3倍くらいのペースでユーザーが増えています。事業を立ち上げてから、3年間で75万ユーザーくらいまで実績を積み上げたのですが、まもなく100万ユーザーを突破しそうな勢いです。ずっと成長はしていますが、どんどん加速している感じですね。
──加速度的な成長を実現している要因は何でしょうか。 小椋 この事業を始めたのは2011年の東日本大震災の前後です。震災をきっかけに、日本の企業はリスクヘッジの観点からシステムをクラウドに移行することを考え始めましたから、ニーズには適っていたと思います。ただ、当時はクラウドアプリケーションといってもGoogle Appsくらいしかなく、エンタープライズ向けITのニーズにベンダー側が応えられていない状況だと捉えるユーザーもいて、なかなか伸びませんでした。
しかし今は、Salesforceが出てきたり、Office 365も健闘していて、ユーザーにとって十分な選択肢がある状況です。とくに、マイクロソフトがOffice 365の拡販に本気を出した昨年あたりからお客様のニーズが盛り上がってきているということだと思います。コラボレーション系のアプリケーションなどは、クラウドに移行しない理由が正直にいってあまり見当たりませんから。
──この伸びはしばらく続くとみていますか。 小椋 先ほど、前期の3倍くらいのペースで伸びていると申し上げましたが、イメージとしては、Google Appsユーザーが前期と同水準、Office 365ユーザーが前期比2倍といったところです。Office 365の勢いは依然としてありますので、HDE Oneもしばらく順調に伸びるのは間違いない。3年くらいは大丈夫でしょうか。ただ、どこかで飽和点に達するのも確かです。想像以上に市場は早く動いているという感覚もありますし。そこで、現在、私たちは日本以外の市場にも目を向けています。
日本でも、2005年の個人情報保護法全面施行のタイミングあたりからセキュリティ意識が急激に高まった感がありますが、それとまさに同じようなことが、アジアでこれから起こるはずです。ちょうどタイ、シンガポール、マレーシアでは、サイバー上でプライバシーを守るための法律が施行される、または施行されたところですので、市場を開拓していきたいと考えています。
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