「IoTのシステムエンジニア」を育てるのは日立
──社会イノベーションを重視するというのは、外資・国産を問わず、総合ITベンダーのトレンドといえそうですが、齊藤社長が考えておられる日立の強みとはなんでしょう。 齊藤 日立のなかには、ものを動かしてそれを最適にしていくという制御システムの部隊をはじめ、ITを活用して業務を効率化する情報システム部隊がいて、それをつなぐ通信のシステム部隊がいる。つまりは、さまざまなレイヤのシステム屋が揃っているんです。重電メーカーは制御システムの技術はありますが、それをITと融合させるだけのカバレッジはありません。IoTの世界の多層レイヤを総合的にカバーできる「IoTのシステムエンジニア」を育てられる企業は、日立くらいではないでしょうか。
例外はGE(ゼネラル・エレクトリック)くらいですかね。でも、GEにしたって、われわれがやってきたような、鉄道の運行管理システムや電力などのトータルのプラントのシステムはなかなかできないでしょう。こういう現場の制御システムをつくってきたSE部隊がいるのに加えて、ITを活用して何ができるか、システム設計をしてつくりあげる情報の部隊が上にかぶさっている。そして、通信領域のシステム設計もできる。これは大きな強みだと思っています。
こうした人材を揃えるために、この2年間、日立ソリューションズから4000人ほど情報システムのソリューション部隊を日立本体に移動させるなど、体制整備を進めてきました。
──単純に、人材が日立本体だけでは足りなかったということでしょうか。 齊藤 IoTの世界では、これまでの情報システムのように、お客様がこう要求しているから言われた通りにつくるという発想では不十分で、現場をよく知っていて、お客様のシステムの神経細胞の部分に入り込んで一緒になってシステムをつくり上げる人間が必要になります。これは、従来の日立本体の人間だけでは不十分でした。結局、彼らのポジションにナレッジやノウハウがたまっていくわけで、将来的にはそれがIoTのビジネスの成長にもつながっていきます。結局、そういう人材をどれだけ抱えているかが、勝負のカギになるんです。
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