トップ5の情報サービス企業に
──しかし、富士通グループにはSE子会社もありますし、事業領域がグループ企業同士でかなり重なっているのが実際のところですね。 高萩 私はそれでいいと思っています。現状は、多少重なる部分があっても同じパイを奪い合う段階まではいっていないですよ。あえていえば、隙間をきちんと取り合っているというイメージですかね。既存のお客様だけをみても、IT資産の現状維持のための投資を少し減らせるようにして、新しい戦略的なIT投資を提案していけば、ビジネスとしての伸びしろはまだまだあります。
ただ、そのためにはわれわれの営業力だけでは限界がありますので、富士通の営業部隊としっかり連携し、彼らの販売力を発揮してもらう必要があると思っています。例えば、当社のLCMサービスも、富士通のメニューとして売ってもらってはいるんですが、まだ営業の現場での認知度は不十分です。富士通のSIと組み合わせるなどして、一緒にサービスメニューづくりを進め、両者にとって利益につながる仕組みをつくっていかなければなりません。
──エフサス独自の成長はあまり重視しないのですか。 高萩 そんなことはありません。クラウドも含め、富士通以外の製品の販売・構築・保守ライセンスを取得したり、技術者育成にも力を入れ、マルチベンダー対応を強化していて、これはエフサス独自の成長に直結する取り組みです。富士通製品だけのコーディネートに比べて難易度は高まりますが、性能設計や検証がしっかりできればいいわけで、そうしたビジネスにも本格的に踏み出すことを、近く宣言するつもりです。ここをクリアできれば、当然、運用・保守も任されるようになりますから、案件の単価も大きくなります。
一方で、当社が外から技術をもってきてマルチベンダー対応を進めることは、富士通グループ全体にとっても、新しい顧客を引き込むきっかけになる可能性があります。富士通グループのなかでミッションを果たすことと、富士通エフサスとして独自に成長することは、同じベクトルの取り組みで実現できることなんです。
──在任中に達成したい目標は? 高萩 現在、当社の売上高は国内の情報サービス企業で10番目くらいです。これを、5番目くらいまでには引き上げたいですね。

‘富士通グループのなかでミッションを果たすことと、富士通エフサスとして独自に成長することは、同じベクトルの取り組みで実現できることなんです。’<“KEY PERSON”の愛用品>社長への道をともに歩んできた 奥様から贈られたロレックスの腕時計を、20年以上愛用している。ちょうど同じ時期にカスタマーエンジニアからサービス営業に転身し、その後のキャリアをともに歩んできた相棒だ。「腕になじみ、愛着もひとしお」とのこと。
眼光紙背 ~取材を終えて~
野武士軍団ともいわれた1990年代中頃の富士通の「攻めの営業」の文化をエフサスに伝え、社内が大きく変わるきっかけをつくった。ただ、もともとCEだったからなのか、快活な語り口の裏に冷静さがにじむ。「いけいけどんどんの営業の人」という印象はない。
同社は、オフィス環境の総合提案などの新領域の事業も始めているが、まずは保守、運用、インフラインテグレーションと、これまで蓄積してきた強みをフルに活用し、現在のコア事業をブラッシュアップするとともに、富士通とのさらなる連携強化で営業の間口を広げ、着実な成長を目指す。
「Change」をスローガンに掲げた中期経営計画も、今年度が最終年度。上半期でしっかり成果を検証し、次期中期経営計画の策定を急ぐ。「仮想化やクラウドは提案の基本になってきている」というが、ヴイエムウェアの仮想化技術者数は国内ナンバーワン。そのためのリソース確保にもぬかりはない。(霞)
プロフィール
高萩 弘
高萩 弘(たかはぎ ひろし)
1959年2月生まれの56歳。栃木県小山市出身。1977年、富士通に入社し、カスタマエンジニア(CE)に。89年、富士通の保守・修理事業部門が分離・独立し、富士通カストマエンジニアリング(現在の富士通エフサス)が発足したことに伴い、同社に出向。91年、転社。以降、営業本部産業営業統括部産業第一営業部長、東京本部産業営業統括部長、執行役員首都圏本部副本部長兼次世代ビジネス企画推進本部員、取締役執行役員兼首都圏本部長、取締役執行役員常務東ブロック長兼首都圏本部長などを歴任し、今年4月より現職。同社初のプロパー社長。
会社紹介
1989年、富士通のCE本部から通信・情報処理機器の保守・修理部門が独立し、富士通カストマエンジニアリングとして設立された(07年に現社名に変更)。現在は、保守サービスだけでなく、インフラインテグレーション、運用サービス、プロダクト販売という四つの事業セグメントが柱となっている。近年、農業、医療、オフィスの空間デザインや環境センシング、BPOといった領域にも事業範囲を拡大している。富士通が100%出資する完全子会社で、資本金は94億175万円。従業員数は6600人を超える。2015年3月期の売上高は2887億円。