東京五輪を前に業界は下り坂に
──クラウドインテグレータとしては日本でナンバーワンとのことですが、日本の伝統的なSIerもクラウドインテグレータとしての一面をもっていると思います。どのような違いがありますか。 クラウドインテグレータとSIerって、明らかに違うんです。仕事のやり方が違えば、エンジニアのあり方も違う。多くのSIerは、その違いに気づいていないんですよね。
──その辺を詳しく。 まず一つは、クラウドのサービスって、進化がすごく速いんです。常にアップデートしていますので、クラウドを活用するためには、エンジニアが常に勉強していないとダメ。
とはいえ、一人ひとりのエンジニアに勉強を強要するわけにはいきません。個人の能力に任せていると、やはり濃淡がついてしまいますから。重要なのは、会社全体として、チームとして、一定の水準を保つことができるかどうか。
当社では、教育を施すチームを用意して現場のエンジニアに教えるというサポート体制を用意しています。お客様のところに行かない専門のエンジニアチームが、新しい技術のキャッチアップだけをやっているんです。ここまでやっているのは、たぶん、当社だけですね。
──新技術を追う部隊はどの会社にもありそうですが、それが社内の教育部門になるというのは、確かに聞かないですね。 二つ目は、クラウドビジネスはプロジェクトの期間が短くて、山が低いということ。例外はありますが、だいたい半年で、費用も数千万円の前半です。プロジェクトが半年で終わっちゃうので、常に営業活動が必要で、次の仕事をどんどんこなさないといけない。要員のアサインも同様です。
──昨年くらいから、基幹系システムのクラウド化が進みつつありますが、その分野での開発期間も変わりますか。 クラウドでは、完全なウォーターフォールではなく、アジャイルっぽいウォーターフォールになります。つまり、クラウドでは開発手法も変わってきているのです。
──基幹系だと、きっちりやる必要があると思うのですが。 金融機関などのクラウドに載らない基幹システムは別ですよ。ただ、クラウド上で動かすのであれば、開発手法は変わっていくでしょうね。基幹システムでもクラウドで動かすときは、プロジェクトが細切れの単位になっていくんですよ。
──では、オンプレミスでも細切れでやればいい気がしますが。 オンプレミスは基本的にスケールしないじゃないですか。最初にインフラを含めてしっかりとデザインしないといけない。すると、設計のところで、ものすごく厚くやらないといけない。
──いずれは、多くのSIerがそのことに気づくのでしょうね。 今はSI案件で溢れていて、多くのSIerは新しいことをやる必要がない。2018年までは、大丈夫でしょうね。というのも、多くの巨大プロジェクトが2017年から18年で終わるんです。だから、東京五輪の前に、IT業界は少し下り坂になるだろうと。そこで初めて、クラウドに着目するわけですよ。私たちは、それまでにシェアを取って、ある程度の規模にして戦えるようにしておきます。そこが2018年までの目標ですかね。
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