伸びる領域で主導権を握る
──国内IT市場については、どう捉えておられますか。 全体的には、市場の伸びが緩やかだと以前からいわれていますし、今後も変わらない。ただ、IoTが平均30%、ビッグデータが20%以上、クラウドサービスがプライベートとパブリックともに伸びるということを考えると、成長する領域は多くある。そのなかで、IoTでストレージ関連のEMC、ビッグデータでPivotalなど、さまざまな領域でアプローチできるEMC連合は、市場で主導権を握る可能性が高い。
クラウドでは、当社がサービスを提供しているわけではないのですが、ストレージを含めてプライベートとパブリックを組み合わせたハイブリッドクラウド環境が整備できるコンバージドインフラを提供できるという点では、ある意味では主導権を握れる領域でもある。また、クラウドサービス事業者に対して「CSPP(クラウドサービスパートナープログラム)」という支援制度を設けています。インフラを構築するための技術的な部分や、クラウドサービスを拡販するための仕組みの部分で、クラウドサービス事業者を支援する。技術と販売の両面でパートナーシップを組むことができるという点が、クラウドサービス事業者から高い評価を得ています。
──クラウドサービス事業者を裏方として支援することで主導権を握るということですが、EMCジャパン自らがサービスを提供することはないのですか。 う~ん。(クラウドサービスを提供する)バーチュストリームを買収したという点では、何ともいえませんが……。今は申し上げられません。この秋にはEMC連合として、クラウドサービスに関する日本での取り組みについて、何らかの答えを発表できると思います。ただ、パートナーになっているクラウドサービス事業者やSIerのビジネスに支障をきたすような取り組みを進めるつもりはありません。
──国内IT市場が緩やかな成長の一方、他社との競争に関しては、さらに激しくなることが予想されます。 もちろん、他社も成長領域に積極的に参入していますので、さまざまな場面で競合する場面が多々あるといえます。しかし、ストレージ一つをとっても、従来型のストレージ、オールフラッシュアレイなど次世代型を含めて、当社はかなりの額を投資しています。一つの製品ポートフォリオしかもっていないわけではない。競争には十分に勝てます。

‘顧客志向が非常に高いということです。社員が一丸となってお客様のことを考える。「テクノロジーカンパニー」であり、「ピープルカンパニー」であるということが強みではないでしょうか。’<“KEY PERSON”の愛用品>アナログデータも重要 「メモ帳とiPadの二つがあれば仕事ができる」。コンパクトということで重宝。iPadで情報を収集し、「思った時に書かないといけない」と常に意識してメモ帳をもち歩く。「デジタルとアナログの両方を駆使したほうがいい」とのことだ。
眼光紙背 ~取材を終えて~
「業務連絡として記録しておくのはメールがいいかもしれないが、意識を共有するには、やはりフェイス・トゥー・フェイス」。対話がすべてという大塚社長にストレージベンダーのあるべき姿を聞くと、「デジタルデータを保管するのは、そのデータを使って人と人のコミュニケーションを活発化させることが使命」という。そのため、目指しているのは、「ストレージに貯めたデータを使って、お客様にビジネスの成長をお届けできる」ことだ。だからこそ、風通しのよい職場づくりを徹底的に行い、顧客志向の高い人材教育に力を入れている。
ユーザー企業やパートナー企業は、EMCジャパンにグロバール化を意識した取り組みを求めている。「ピープルカンパニー」に「グロバールカンパニー」の要素が加わったとき、EMCジャパンはさらに強くなる。(郁)
プロフィール
大塚 俊彦
大塚 俊彦(おおつか としひこ)
1962年12月24日生まれ、東京都出身。85年3月、早稲田大学理工学部卒業。同年4月、日本IBMに入社。米国本社への出向や製造装置の営業、経営企画、執行役員などを担当。06年10月、シスコシステムズに入社、執行役員エンタープライズ営業担当、専務執行役員などを歴任。10年4月、日本オラクルに入社し、サン・マイクロシステムズに出向、同社の社長執行役員に就任する。日本オラクルでは、専務執行役員や副社長執行役員などを歴任。14年12月、EMCジャパンの代表取締役社長に就任する。
会社紹介
米EMCの日本法人として、1994年に設立。ストレージ機器を中心にEMCブランドの製品販売と保守を手がけるほか、ヴイエムウェアをはじめ、さまざまなグループ会社をもつことから、「EMC連合」として、IoT、ビッグデータ、クラウドなどに強い製品・サービスを提供している。設立当初は直販を中心に据えていたが、現在は間接販売を中心にビジネスを拡大している。SIerなど同社の製品・サービスを提供する販社向けのパートナープログラムに加えて、クラウドサービス事業者向けの支援体制も構築し、パートナーシップを広げている。