日立系SIerのニッセイコムの安達春雄社長は、情報サービスビジネスの事業環境が激変すると警鐘を鳴らす。東京五輪の反動減や少子高齢化、市場の一段の成熟など、予測可能な要素だけでも、事業環境の変化に十分なインパクトを与えるとみているのだ。こうしたなかでSIerが勝ち残るには、「徹底した顧客起点、顧客主義を貫くほかない」と断言する。技術を磨くのはもちろん、客先に足しげく通い、ユーザーの属する業界や業務をとことん学びとるニッセイコムの企業文化をより伸ばしていくことで成長につなげる。
“元気に明るく前向きに”
──ニッセイコムのトップに就いて4か月あまり、どのような施策を打ってきましたか。 まず、前段のお話をさせてください。日立製作所に勤めていた私とニッセイコムは、40年近いおつきあいというか、ビジネス上で深い関係を保ってきたんですよ。今回、トップを拝命してからも、ニッセイコムのことはことさらよく知っていますので、すんなり仕事に就けました。
──40年前って、つまり70年代後半のオフコンやメインフレーム全盛の頃ですよね。 そうです。私は京都生まれで、当時は日立製作所の京都支社に勤めていたのですが、オフィスにはニッセイコムの若手社員が何人も出入りしていて、密接に連携していました。ざっくりいえば、日立製作所が大規模ユーザー、ニッセイコムが中小規模ユーザーというふうに分担してあたっていたんですよ。
ニッセイコムはとにかくフットワークがよく、顧客起点が徹底している企業文化をもち、ややもすれば「お客さんさえ儲かってくれれば、うちは儲からなくてもいい」と言って憚(はばか)らない人もいて、当時から「おい、大丈夫か?」と思ったりしていました。実際、この4か月あまりトップを務めてみて、いい面も、ちょっと顧客主義が過ぎる面も、本当に昔と変わらない会社です。
──中堅SIerであるニッセイコムのトップとしてみた事業環境は、また違ったものにみえるのではないでしょうか。 私もニッセイコムも“元気に明るく前向きに”をモットーにしているのですが、冷静にみると、2020年の東京五輪後は景気の揺り戻し、反動減が起こると考えるべきですし、さらにその先は極端な少子高齢化、市場の一段の成熟化が進むでしょう。そう遠くない将来、情報サービス業界にとって大口顧客である金融機関のIT投資規模は、最盛期の5分の1くらいに減ってもおかしくないですし、大都市圏を除いた官公庁や自治体の財政も厳しさを増す一方です。70年代、80年代は官公庁/自治体といえば、オフコン販売ビジネスの“ドル箱”だったことを思えば、隔世の感がありますね。
私らしくもない少しネガティブなことを言ってしまいましたが、明るい部分もたくさんあります。日本人は器用ですので、社会の変化にうまく適応し、従来型とは違ったビジネスを生みだしていく能力があると思うのです。昔では考えられなかった中国人旅行客の“爆買い”現象一つ挙げても、今は物販中心ですが、将来的には、例えば医療サービスのような高度なサービス商材に幅を広げられるのではないかといわれています。
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