外資系企業からみた地方創生
──ICTによって社会的な課題解決を目指す協議会「digital economy council(dec)」は、レノボ・ジャパンが旗振り役となって15年11月に立ち上がりました。オープンイノベーションの件につながる話だと解釈していますが、発表当時は「なぜ外資系企業が」と。外資系企業からみた地方創生って、どんななんだろうかと。 外資系で働いていても、日本人は日本人じゃないですか。それに、日本のプロジェクトでも、海外の最先端のテクノロジーを採り入れる必要があります。結局、グローバルとローカルは切り離せないんですよ。その橋渡し役を、外資系畑で働いてきている私が担いたいと思っています。
──オープンイノベーションの取り組みを、御社のビジネスにどうつなげていきますか。 端末の種類が増えていって、それが使用される時間が増えていって、その面積が増えていくことで、われわれのビジネスが増えていくわけです。その意味でも、新しいパーソナルコンピューティングの世界をつくっていくのが、われわれのビジネスに直結してきます。
──PCだけでみると、市場は厳しいじゃないですか。その点はどうお考えですか。 ハードウェアの世界は、スケールが必要です。グローバルで展開して、スケールをつけていかないといけない。ただ、それだけじゃない。コモディティ商品といい張って、ローカルに配慮しないと、やはりうまくいかないですよね。ローカルの特性に合ったサービスや製品をグローバルのスケール、かつ、ローカルのニーズを理解して提供していく。そのバランスが取れないとうまくいかない。レノボの強みは、まさにそこにあると思います。
──レノボ・ジャパンが15年に10周年を迎えました。今後の10年については、どのようなことをお考えですか。 レノボ・ジャパンは、日本の強みをしっかり主張して、グローバルのオペレーションを理解しながら発展してきました。次のステージに上がっていくためには、レノボに閉じた世界ではなくて、共創、オープンイノベーションというエリアでトップランナーになっていかなければいけない。時代がそれを求めていると思います。

‘グローバルとローカルの橋渡し役を外資系畑で働いてきている私が担いたいと思っています。’<“KEY PERSON”の愛用品>ペーパーレス化を実践中 ビジネスでも日常生活でも、ペーパーレス化を実践中。代わりに携帯しているのが、レノボのWindowsタブレット「ThinkPad 10」。「会議に行くときは、これ1台で十分。もう手放せない。カバンの中身もシンプルになった」という。
眼光紙背 ~取材を終えて~
レノボはグローバルカンパニーだが、レノボ・ジャパンは日本企業のようなカルチャーをもっている。留目社長の発言の一つひとつから、そう強く感じた。日本IBMやNECから続く企業文化もあるのだろうが、むしろレノボ・ジャパンが10年かけて築いてきた文化なのかもしれない。そう考えると、留目社長の“日本人がトップに就くタイミングだった”という発言もしっくりくる。
外資系企業の現地法人トップは、本社の指示に翻弄されることが多い。本社が日本市場を理解できないためだ。留目社長には、そんな雰囲気はまったくない。むしろ、レノボ・ジャパンの成功体験をグローバルに展開するという野心すら抱いている。
趣味を聞いたところ「ゴルフ」と返ってきたが、すぐに取り下げた。代わりに出てきたのが、趣味とはいえないが「人と会う」のが好きだという。企業のトップに就くと、人と会う機会が自然と増える。だから“社長は楽しい”となる。オープンイノベーションに熱心なのも、そういうことなのだろう。(弐)
プロフィール
留目 真伸
留目 真伸(とどめ まさのぶ)
1971年9月22日東京都生まれ、早稲田大学政治経済学部卒。トーメン、コンサルティングファームモニターグループを経て02年にデル日本法人入社。06年にレノボ・ジャパン入社、翌年より執行役員。11年、NECとのジョイントベンチャー設立にあたって同社取締役を兼務し、レノボとのインテグレーションプロジェクトをリード。12年にはレノボ米国本社にてM&A戦略を担当。15年4月より現職、レノボ・ジャパン、NECパーソナルコンピュータの社長を兼務。44歳。
会社紹介
レノボは2005年にパソコン事業をIBMより継承、パソコンシェア世界一のブランドへと成長させる。14年にはIBMよりPCサーバー事業を継承。11年7月、NECとレノボのジョイントベンチャーとして、NECパーソナルコンピュータが発足。個人向けおよび官公庁教育市場に強いNEC、IBM時代からの大手企業とのリレーションをもつレノボという補完しあう二つのブランドによって、国内最大のPCグループとなる。ジョイントベンチャーのシナジーにより、NECの競争力アップとともに、NEC米沢工場におけるレノボ製品の一部生産も開始している。