あらゆる領域に「Digital」が浸透
──確かに“革命”とは、ある種の“断絶”をもたらすもので、そういう意味ではSIerをはじめとするITベンダーのビジネスにも“断絶”が起こるということでしょうか。 私は「ITビジネスは、昨日までできなかったことが、今日できるようになる」ビジネスだと、社内でもよく口にしています。CPUの処理速度とメモリ、ストレージの容量が、ある閾値を超えると、できなかったことが、できるようになる。近年ですとコンピュータ単体ではなく、クラウド全体の処理や容量といったほうがしっくりくるかもしれません。
クラウド側だけでなく、端末側での分散処理を表すフォグコンピューティングやエッジコンピューティングも大きく進化している。できなかったことができるようになる、ある種の断絶は、往々にして突如として訪れるものであり、私たちSIerが、このテクノロジーの断絶を乗り越えられなければ、そこで成長は終わりです。
──御社自身、中期経営計画で目指した売り上げ目標1兆5000億円を1年前倒しで達成してしまうなど、相当、前のめりの印象ですが、断絶を乗り越え続けてきたということでしょうか。 当社が独立した1988年の年商は2200億円あまりで、海外売上高はほぼゼロ。とてもドメスティックな会社だったのが、直近では海外売上比率は約3割、世界42か国の180都市に拠点を展開し、約8万人の従業員の過半数は海外拠点に勤務するまでになりました。独立当初の延長線上では、とても描けなかった姿です。
転機になったのは、2005年頃から徐々に取り組んできた海外でのM&A(企業の合併と買収)で、それに伴ってグローバルITベンダーにふさわしい経営体制の布陣も整えました。日本のSlerであるNTTデータらしさは常に大切にするよう心がけていますが、数字だけみると、もはや過去のドメスティックな会社からは、いい意味で何度も“断絶”を身をもって体験しています。
──テクノロジー面では、どうでしょうか。 あらゆるものがインターネットにつながるIoTやビッグデータ、セキュリティ、ロボティクス、FinTech(フィンテック)などのテクノロジーをひとくくりにして「Digital(デジタル)」と呼んでいるのですが、企業経営のみならず、政治や文化、芸術、宗教といったあらゆる領域にDigitalが浸透し、影響力を発揮しています。テクノロジーを追究するのは当然のことで、当社ではさらに一歩踏み込んで、Digitalが浸透することによって変化するであろう業種・業態に関するノウハウの蓄積にも努めています。テクノロジーと適用領域のノウハウが合わさってこそSIerの価値を生かすことができるからです。
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