ゴールが決まれば余計な言葉はいらない
──御社は、これまでさまざまなソフト会社などをM&A(企業の合併や買収)して、成長の原動力の一つとしてきましたが、なかには業績的に厳しい会社もあったとうかがっています。 実際に、ほとんど債務超過の状態になっている会社を再生したこともありますが、その会社をよくよくみると、業績が行き詰まる“原因”がちゃんとあるんです。第三者からみれば明白なことでも、当事者であるマネジメント層が気づかない。いや、気づいてもどうしようもない袋小路に追い込まれてしまっているケースがほとんどなのです。そこで、私が出て行って、その障害を取り除くのです。
資金が不足しているのであれば、資金を補充する。マネジメント層の経営方針が割れているのであれば、どちらかバッサリと切る。そして──ここが一番重要なのですが──ゴール(勝利条件)を明確に決める。だいたいこの三つを実行すれば、組織のかたちがマネジメントを頂点とするきれいな“三角形”になって、ゴールに向かって動き始めます。
──荻原さんへのインタビューで感じたことなのですが、うわさ通りと申しますか、歯に衣着せぬというか、容赦ない物言いですね。 婉曲に言っても何も始まらないでしょう。ゴールがみえている場合は、余計な言葉は取り払って、単刀直入に言いますよ。勝利条件がわかっているわけですから、それに向かって足りないものは補い、余っているものは削っていきます。そりゃ、組織の角を削って、きれいな“三角形”にするわけですから、ときには強い言葉になってしまうこともあるでしょうけれど、袋小路から抜け出して、再び成長するためには避けて通れない。たとえ、その場でケンカになっても、相手にケガをさせずに押さえ込む自信はありますよ(苦笑)。
──いや、それはダメでしょう! もちろん冗談ですが、それくらい真剣だということです。
──M&Aが成長の原動力になる一方で、荻原さんが一番ご苦労した点でもあると。 いや、一番辛かったのは初めての大型M&Aとなるオープンストリームが、2006年に当社グループに加わる以前ですね。創業まもなく、大型のシステム開発案件が次々と決まったまではよかったものの、当時は豆蔵単独でほぼやっていたものですから、社員に負荷がかかりすぎて、人が去って行ってしまったこともありました。転機になったのはオープンストリームに続いて、コンテンツ配信に強いネクストスケープや、半導体の製造装置を中心としたエンジニアリングに強いジェイエムテクノロジーが続々と当社グループに加わってくれたことです。これによって先述のソフトウェアとエンジニアリングを一体的に展開できる、今の当社らしい事業モデルの構築につながりました。
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