外資系ゆえのジレンマはない
──望月社長のご経歴は、レッドハットにどのように貢献できるとお考えですか。 お客様の声をしっかり聴く。社会人になってから、その重要性は常に痛感させられています。
──ニューヨーク勤務など、グローバルで活躍されてきたと思いますが、その経験という意味ではどうでしょう。 グローバルでの最先端事例をきちんと理解して、日本のお客様にお届けしてきましたので、レッドハットにおいても、それをしっかりやります。日本が遅れているとは思いませんが、例えばUberやFacebookなどは、オープンソースを使ってビジネスそのものをトランスフォームしているといったところは、米国と比較するとギャップがあるかなと。いい事例を日本のお客様に伝えることで、いい刺激となって、イノベーションにつなげていただけたらと思います。
──外資系日本法人の社長は、本社の意向が強くて、勝手なことを言えなかったりします。 私はずっと外資系ですが、あまりそういう経験はないですね。よくあるシンクローカル、アクトグローバルです。グローバルの戦略や投資をちゃんと理解して、それをローカルでどうレバレッジするのかと。そのなかで、日本に合わないものはフィードバックする。外資系といえども、きちんとしたフィードバックをすれば理解してもらえるので、ジレンマはないですね。
──日本から世界に発信するという点では、どうですか。 日本は、いろいろなプロダクトを組み合わせて、一つのソリューションとしてお客様に提供するのが得意です。日本発のソリューションパッケージとして、レッドハットの世界標準になった事例もあります。
──日本から発信できたほうが、社員のモチベーションも変わりますよね。 そう思います。9割の会社はすばらしい戦略をつくるが、1割の会社しか成功しません。社員一人ひとりが、会社の戦略に対して何をするべきかを理解しているかどうかで変わるんですよ。レッドハットには、そのための環境がある。そこが、すばらしいのです。

‘9割の会社はすばらしい戦略をつくるが1割の会社しか成功しない。社員が理解しているかどうかで変わるんですよ’<“KEY PERSON”の愛用品>NYで出会ったアタッシュケース ニューヨークで勤務していたときに購入したハートマン(HARTMANN)のアタッシュケース。エグゼクティブ御用達として人気がある。20年以上使っているが、まったく古くならないデザインと耐久性がお気に入り。
眼光紙背 ~取材を終えて~
オープンソースのプロバイダは当初、既存勢力を価格競争力で攻め落とし、シェアを伸ばしてきた。ベンチャー気風の勢いはレッドハットも例外ではなく、日本法人の社長とはいえ荒々しさを感じさせるものがあった。
大手IT企業育ちの望月社長には、レッドハットのイメージにはなかった堅実さを感じる。レッドハットのエンタープライズ分野における実績を思えば、もはや荒々しさを感じさせる存在であるはずがない。むしろ、現在の立ち位置にあった社長人事ということだろう。
望月社長に趣味をうかがったところ、とくにないという。休日は愛犬とゆっくり過ごすとのこと。ただ、本人は口にしなかったが、実は車好きだと聞いた。自動車では何かと自動運転が話題となっているため、その話題を振るべきだった。自動車では、今後ますますソフトウェアが重要な役割を担うようになる。そこでオープンソースはどのような貢献をしていくのか。望月社長がレッドハットのビジネスに染まり切ったところで、そんな質問を投げかけてみたいと思う。(弐)
プロフィール
望月 弘一(もちづき ひろかず)
日本IBMの営業担当者としてキャリアをスタート。1998年から2年間の米国IBM本社勤務、2000年から営業部長、04年1月にはアジア太平洋地域グローバル・サービス事業のオペレーション本部長。05年に日本のグローバル・サービス事業のオペレーション本部長兼理事、07年にグローバル・ファイナンシング事業部長兼執行役員に就任。10年にNTTが買収した南アフリカのディメンションデータの日本法人、ディメンションデータジャパン(旧データクラフトジャパン)の代表取締役社長に就任。15年11月、レッドハットの代表取締役社長に就任。
会社紹介
レッドハットは、米国ノースカロライナ州ラーレーに本社を置く、エンタープライズLinuxを中心とするオープンソースソリューションのプロバイダ、Red Hatの日本法人。Red Hatはコミュニティとの協業により、クラウドやLinux、ミドルウェア、ストレージ、仮想化テクノロジーを提供している。Red Hatの2016会計年度(15年3月~16年2月期)売上予想は、米ドルベースで20億4400万ドル~20億4800万ドル。