MCFrameの新バージョンも年内にリリース
──何度かお話にも出ましたが、MCFrameのライセンス売上高が前期決算で過去最高を更新するなど、自社プロダクトは非常に好調ですね。 プロダクト事業は、現在の製品ラインを強化することが大きなテーマです。主力のMCFrame XAシリーズは年内に新バージョンをリリースする予定です。次のステップとしては、次世代MCFrameの構想を進めていて、順次リリースしたいと思っています。
──強化ポイントはどんなところでしょうか。 UX(ユーザーエクスペリエンス)を向上させるということは、非常に強く意識していますし、海外に事業を展開している日系企業のユーザーに、コンパクトに導入してもらえるかたちにしたいとも構想しています。操作性を強化して、モジュール方式で必要な機能を手軽に組み合わせて使えるようにするということですね。
──もともと海外拠点での導入数は伸びが大きかったと思いますが、それをさらに加速させるというのが大きなテーマになりますか。確かに、製造業のサプライチェーンが日本国内だけで完結することはほとんどないですよね。 日本の製造業のクライアントは、そこが絶対に経営課題になっていますから。1年ほど前にCADソフト大手の図研と資本・業務提携して、製品設計から生産・販売・原価管理まで、一気通貫でソリューションを提供するベースができました。ものづくりのノウハウがあり、他社の製品と自社の製品を組み合わせてベストなソリューションを提案できるインテグレーションの力がある。そして海外でのビジネスのノウハウもある。これらをすべてもち合わせているのは、当社くらいじゃないでしょうか。
──経営 Vision 2020も、そうした強みを踏まえ、ある意味でオーソドックスな進化を追求したということになるのでしょうか。 ITベンダーとして、製造業向けを中心としたビジネスだけでいいのかという葛藤はありましたよ。ただ、現在の当社の規模で日本の社会に最大限貢献するには、やはりやるべきなのは日本の製造業を力づけることだという結論に至ったんです。そのためには、彼らの海外展開をさらに協力に支援していく必要があるということです。
日本の労働人口はどんどん減っていますが、そのなかでわれわれが製造業の生産性を上げる仕組みを提案していかなければ、500兆円のGDPも縮んでいってしまうという危機感があります。ITベンダー側が提案型で語らないといけない時代になっているんです。

‘われわれが製造業の生産性を上げる仕組みを提案していかなければ、日本のGDPも縮んでいってしまうという危機感があります。’<“KEY PERSON”の愛用品>最強のコミュニケーション・ツール 知る人ぞ知るブルースマンである大澤社長は、海外出張も愛用のブルースハープとともに──。現地のクラブでセッションに飛び入り参加するのが恒例だ。シカゴで開かれた国際会議の夕食会で演奏し参加者の心をつかんだ経験も。
眼光紙背 ~取材を終えて~
1970年代前半の関西ブルースシーンの影響をもろに受け、以来、自身でも演奏活動を継続している。「60歳になったら、ブルースハープを手に世界を放浪したいと考えていたのに……」と笑いながらこぼすが、100%の冗談とも言い切れないのかもしれない。記者も、大澤社長がブルースセッションに飛び入りで参加して、歌い、ブルースハープを演奏したのを観たことがある。僭越ながら、なかなか堂に入ったブルースマンっぷりで、独自の世界観をもつ人だと強く印象に残った。
独立・創業時から在籍する生え抜きで、前任の石田壽典氏(現会長)との年齢差はわずか3歳だが、B-EN-Gの大きな変革を託された。最も重視するのは、ROE10%の達成だ。「お客様の満足と利益を両立して初めて、継続的な成長のための投資ができる」と、力を込める。年明けからは、自らが講師となって「社長塾」を開き、中堅社員を将来の幹部として養成するための人材育成策にも取り組んでいる。(霞)
プロフィール
大澤 正典
大澤 正典(おおさわ まさのり)
1953年8月生まれの62歳。福岡県出身。京都大学大学院工学研究科を修了し、78年、東洋エンジニアリングに入社。99年4月、東洋エンジニアリングの産業システム事業本部が東洋ビジネスエンジニアリングとして独立したことに伴い、同社に入社。2004年に取締役、06年に常務取締役、08年には代表取締役・専務取締役に就任。14年6月より現職。
会社紹介
大規模プラントの設計や機器調達、建設などを手がける三井系のエンジニアリング企業である東洋エンジニアリングの産業システム事業本部が前身。1991年、日本初のSAPパートナーとしてERPビジネスを開始した。96年には、自社パッケージ「MCFrame」をリリース。99年、東洋ビジネスエンジニアリング(B-EN-G)として開業。2007年、海外拠点会計パッケージ「A.S.I.A.」事業を統合。13年4月、東京証券取引所市場第2部に株式上場。14年4月、東証第1部に株式上場。