英語カリキュラムを世界へ
──二つ目は、どのようなことになりますか。 英語教育への参入です。当社の会長、ダニエル・ファンガーが経営する幼稚園で英語教育に力を入れていまして、長年のノウハウがあります。それをカリキュラムとしてまとめ、販売を始めました。5年ほど前から取り組んでいます。
──教材の販売ということですか。 教材もありますが、レッスンのためのトレーニング方法やマニュアル、学校や教師が対象の手厚いサポートを含む総合カリキュラムとして提供しています。対象は、日本人だけではないんですよ。
──海外に? 米国でも販売しています。米国で英語カリキュラムというと、なぜと思われるでしょうが、ニーズがあるのです。先日、導入先の学校にお邪魔したのですが、先生にとても感謝していただきました。米国といえども日常生活で英語を使わない地域があるのですが、問題となるのは子どもの将来。小学3年生までに英語を使えるようにならないと、犯罪者となる確率が上がるという統計があるのです。社会問題の解決に当社の英語カリキュラムが貢献できると思うと、とてもうれしいですね。
最近では、ウガンダの学校に導入しました。ほかの国からも要望がきていて、口コミで世界中に広がっています。まだ始めたばかりですが、すでに500校で導入され、4万人が利用しています。そのうち、日本人は1万人。とても手ごたえがあるので、4000万人も夢ではないと思っています。
──英語カリキュラムは海外に展開しやすいのかもしれませんが、経理システムや開発支援ツールなどを提供するITベンダーとしてのグレープシティとは、ずいぶんと違う世界かと。 ITではないですね。ただ、今後の展開を考えると、ITで得たノウハウも融合させていく必要があると感じています。販売しているのはカリキュラムですので、現時点では導入先でサポート要員が必要となるためです。サポート要員には限りがありますから、どうしても効率が悪い。そこでITを活用する必要が出てくると考えています。
当社は映像制作の事業も手がけていますが、経理システムや開発支援ツールの事業部とはあまり接点がありませんでした。それが英語教材では、映像制作の事業部でアニメーション制作などを担当しています。そこにIT関連の事業部が加われば、全社が英語カリキュラムの事業の下で一つになることができるのです。
──あ、そういえば馬場社長は教育者を目指していました。 えぇ、つながりました。やっと夢が実現したという感じです。ITの企業に入ったのは、このためだったのかもしれません。教育は、人づくり、そして国づくりに大きくかかわります。それだけに、英語カリキュラムの事業を成長させなければいけない。まだ始まったばかりですが、成功すると確信しています。

‘世界をみていますから本社が東京か仙台かは意識していません’<“KEY PERSON”の愛用品>ツールは使えればそれでいい 「ビジネスツールに特別なこだわりはなく、使えればいい」と馬場社長は語る。あえて選ぶならと取り出したのが、アップルの「iPhone」。「定番すぎると思ったが、ビジネスシーンを大きく変えたから」と評価している。
眼光紙背 ~取材を終えて~
米国で英語カリキュラムを売る。それも日本企業が手がけると聞いて、驚かない人がいるのだろうか。本紙の役割としては、経理システムや開発支援ツールの動向や取り組みを聞くべきだが、すっかり英語カリキュラムの話に夢中になってしまった。日本人が知るべき事業の一つであることは間違いない。
教師になりたかったとインタビューの冒頭で語ってくれた馬場社長。会社のこと、事業のこと、海外展開のこと、どれもきっちりとした答えが返ってきて、手堅い性格との印象を受けたが、英語カリキュラムの話には高揚感がにじみ出ていた。米国で感謝されたことをうれしそうに話す姿に、教師を目指していたという冒頭の話を急に思い出した。馬場社長は「つながったんです」と笑顔をみせた。
グローバル化は、難しくないのかもしれない。そんなことを思った。米国で英語カリキュラムが売れるのだから、日本のソフトウェアには、もっと大きな可能性があるはずだ。(弐)
プロフィール
馬場 直行
馬場 直行(ばば なおゆき)
1970年生まれ。仙台市内の私立学校で経理事務を経験し、92年4月にグレープシティ(当時は文化オリエント)に入社。最初は、レーザー事業部・システム営業部に所属し、全国の私立学校(幼稚園から大学まで)のソリューション営業を担当する。97年4月から仙台本社に転勤し、経理部長として従事。2000年4月から取締役副社長を務め、2005年4月に代表取締役社長となり、現在に至る。
会社紹介
1980年5月に、民芸品などの輸入・販売を手がける会社として創業。当時の社名は、文化オリエント。83年に私立学校法人向け経理ソフト「LeySerシリーズ」を発売し、ソフトウェアベンダーとなる。2002年1月に社名をグレープシティに変更。現在では、海外7か国に拠点をもち、社員数は国内200人、海外800人という体制になっている。