ヤフーグループのデータセンター(DC)事業者であるIDCフロンティアは、顧客が抱える経営課題の解決や、ビジネス創出のプラットフォーム事業をより進化させる。この4月1日付でトップに就任した石田誠司社長は「スペック(仕様)ありきの話は大嫌い」と話す。顧客の課題を浮き彫りにし、それを解決してビジネスを成功に導くことを重視しているからだ。顧客ビジネスの創出や活性化させる「データ集積地構想」を打ち出し、従来型のDCビジネスから脱却。ユーザーのビジネス創出を軸に据えたモデルへ変革させる。
スペックより、課題解決ありきに転換
──4月1日付でトップに就任されたわけですが、さっそくビジネスプランのお話をお願いします。 当社はヤフーグループの一員として、DCを活用したビジネスを手がけています。けれども私自身は、サーバーのCPUがどうとか、ネットワーク機器のこの部分の性能がどうとかいうスペック(仕様)ありきの話は、正直いって大嫌いです。DC事業者も、普通の情報サービス会社と同様、顧客の抱える課題を浮き彫りにし、これをITを活用して解決することを主眼にすべきであって、その解決に必要なスペックを語る分には、大いにけっこう。データセンターが、単なるサーバーの貸し出しや運用する場所にとどまっていては、将来はないと考えています。
──石田社長がIDCフロンティアに入社したのは、2006年とのことですが、当時はまだ旧国際デジタル通信(新電電)の雰囲気が残っていて、どちらかといえば設備貸しがメインという印象がありました。実際はどうなのでしょう。 ソフトバンクグループに加わったのが05年ですので、そういう印象をもたれたのも、不思議なことではありません。むしろ、そうした企業文化を変えていこうとしていたから、私のような人間が採用されたのかもしれませんね。
──「私のような」とは、どういう意味でしょうか。 私は、新規顧客の開拓に生きがいを強く感じるのですが、当時はそういうタイプがあまりいなかった。取り引きのなかった顧客に振り向いてもらうには、顧客の心をつかむ、つまり顧客の課題やニーズを探りあてなければならない。私を採用した当時の経営幹部らも、「会社を変えたい」との思いで、昔の社風とは違う人材を多く集めようとしていた。私もそのうちの一人として白羽の矢が立ったのでしょう。
昔話になりますが、インターネットが爆発的に普及する勢いに乗って、DCも「つくれば売れる」時代が長らく続きました。当社もご多分にもれず業績を伸ばすことができたまではよかったのですが、気がついてみると、顧客がラックをなぜ追加発注したのか、よくわからないまま受注伝票だけを回している状態が、ややもすれば垣間みられたわけです。これでは、設備投資の計画くらいは立てられても、戦略的な経営を実践することは難しく、営業の戦術を磨き上げることも不可能。ライバルとの競争上、とても不利で危険な状態だったのです。だからこそ、私は入社以来、徹底的に顧客課題の解決策やニーズを探りあて、1社でも多くの新規顧客を獲得できるよう、自分の培ってきた営業ノウハウすべてを注ぎ込んできました。
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