共有型DMPで顧客のビジネスを活性化
──アプリケーションやデータ活用とは、具体的にどんなイメージでしょうか。 キーワードは「同業者」や「ビジネスパートナー」との協業、「顧客のマーケティングデータ」。つまり、クラウドを基盤として、プレイヤーが集まる場所をもっと広げて、そこでビジネスマッチングをはじめとする、さまざまなビジネス創出の機会を増やしていくことを基本戦略とします。
私は、これを「データ集積地構想」と呼んでいて、同業ベンダー同士の「クラウドアライアンス」、すぐれたアプリケーションをもっているISV(ソフト開発会社)やサービスベンダー同士の「エコアライアンス」、そしてマーケティングデータを連携させることで、新しい気づきや新規ビジネスの立ち上げに役立てる「データエクスチェンジ」から成り立つものです。「エコアライアンス」については、今年1月の発表時点ですでに20社のアプリケーションやクラウドサービスベンダーが参加を表明してくださり、早い段階で100社規模の参加を見込んでいます。
──常に最新のクラウド環境を実現するハードやソフト、ビジネス創出に役立つアプリやサービスを、御社のみならず業界を巻き込んでユーザーの経営課題に役立てるわけですね。三つ目の「データエクスチェンジ」が、いまいちよく理解できないのですが、言葉を補っていただけますか。 「データエクスチェンジ」は、文字通りデータを交換することで、主に顧客のもつマーケティングテータ(エンドユーザーのニーズの移り変わりや、商品の売れ筋動向など)を当社のデータマネジメントプラットフォーム(DMP)上で共有しようというものです。流通・小売業を中心に各社でプライベートDMPを構築しているケースは多いのですが、当社が打ち出している共有型DMPは、これらを共有し、より大規模にデータ分析を可能にする試みです。
──ポイントカードをさまざまな業種・業態で共通化し、マーケティングデータを共有する動きと似てますね。 共有型DMPでは、多種多様な業種ユーザーのマーケティングデータを、競合しない範囲で共有し、市場全体を俯瞰できるようにする。エンドユーザーの個人情報に関わるデータは、どうしても他社と共有しにくい部分ですので、匿名化技術によって個人を特定できない純粋なマーケティングデータとして共有、分析できる点もミソです。さらに将来的には親会社のヤフーがもつマーケティングデータと共有可能にすることも視野に入れており、文字通りのデータエクスチェンジを実現。サーバーを管理するDCから、顧客のビジネス創出に役立つビジネス創出センターへと変革していきます。

‘クラウドを基盤としてプレイヤーが集まる場所をもっと広げてビジネス創出の機会を増やして行く’<“KEY PERSON”の愛用品>この時計を見るたびに初心に返る スイスの「ブライトリング」の腕時計がお気に入り。IDCフロンティアに入社した2006年、渋谷で購入した。この時計をみるたびに「新天地で意気揚々としていた初心に返り、やってやるぞ!」と、思いを新たにしている。
眼光紙背 ~取材を終えて~
サーバーを貸し出したり、預かったりするのは「“DC”ではなく、“サーバーセンター”に過ぎない」と断言する石田誠司社長。顧客のビジネス創出に役立つアプリケーションやサービスを揃えるとともに、共有型DMPによって顧客がより戦略的なマーケティングを展開できる基盤づくりに力を入れる。データを活用して顧客の売り上げや利益の増大に貢献するのが、同社が追求する次世代型DCビジネスの姿である。
ソフトバンク/ヤフーグループの規模と技術力、顧客のビジネス創出に軸に据える同社は、国内DC事業者の最先端を行くベンダーであるといっても過言ではない。しかし、敢えて課題があるとすれば、あくまでも「国内限定」であること。エクイニクスやColtテクノロジーサービス(旧KVH)などがグローバル市場で幅を利かすなか、今後、これら海外大手との競争にどう勝ち残っていくのかが問われている。(寶)
プロフィール
石田 誠司
石田 誠司(いしだ せいじ)
1968年、京都府生まれ。90年、立命館大学法学部卒業。同年、CSK(現SCSK)入社。96年、CSI(現CSIソリューションズ)。04年、日本SSAグローバル(現インフォアジャパン)。06年、ソフトバンクIDC(現IDCフロンティア)入社。11年、取締役運用本部長。13年、取締役カスタマーサービス本部長、16年4月1日、代表取締役社長就任。
会社紹介
ヤフーグループのIDCフロンティアは、首都圏と関西圏に展開する都市型データセンター(DC)と、福島県白河市と福岡県北九州市の二つの巨大な地方型DCを運営する国内最大手クラスのDC事業者である。