沖電気工業の社長が7年ぶりに交代した。財務悪化に苦しんだここ数年を乗り越え、鎌上信也社長は「次の成長」を託された。ATMやプリンタなど安定的に成長する分野はある。だが、ここに安住するつもりは毛頭ない。先端のデジタルテクノロジーであるIoT(Internet of Things)やAI(人工知能)などを駆使し、独自の強みのある分野で存在感を現すべく、改革を始めている。
「業種」でなく「業務」を切り口に
──社長に就任したばかりですが、沖電気工業をどう成長させていくか、現段階での考えをお聞かせください。 現在、2017年度(18年3月期)からの「中期経営計画(中計)」(3か年)を議論している最中です。経営目標の指標や、どこに次の成長を求めるのか、などについて議論しています。いまのところ、プリンタ、メカトロシステム、社会インフラの各事業にプラスして、EMS(電子機器の受託生産)が事業の柱になると考えています。EMSは違う毛色ですので、「3+1」という言い方をしています。社会インフラといいましても、具体的な内容はこれから詰めていきます。ですが、通信システムを主体としたIoTのセンシング技術やビッグデータ処理、AIなどを絡めて、社会インフラとして提供することを議論しています。
──IoTやAIなど、先端のデジタルテクノロジーに関する指摘がありました。これらを含め、事業の成長で肝になることは何であり、そうしたテクノロジーを沖電気工業的にどう展開しますか。 IoTも、いろんなレイヤがあると思います。そのなかでも、センシング技術を使ってデータを取り入れ、これを活用する。いわゆる一般的なデバイスのセンサだけではなく、アプリケーションなどを含め、少しレイヤが上の部分も使って、顧客の「業務」に合わせた事業を展開したいと思っています。
──今までの事業とは、どう整合性をとるのか、また、IoTやAIなどはまったく新規の分野という位置づけなのでしょうか。 4月1日には組織変更をしました。ソリューション&サービス、通信システム、社会システムを扱う「情報通信事業本部」という組織を創設しました。この目的は、これまでは業種向けに縦割りでしたが、今後は「業種」でなく「業務」を中心に事業を展開するためです。ソリューション&サービスでもっている金融など法人向けの顧客チャネルや、通信システムでもっているネットワーク技術、社会システムにある交通、防災関連などの技術を、顧客の必要とすることに対し、これらの技術を融合して製品を展開したい。
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