前社長の4年間はタイの洪水など不可抗力に見舞われながらも、製造・開発の効率化で収益を確保してきたOKIデータ。今年4月、コンサルティング会社で経験を積んだ波多野徹氏が社長に就任した。波多野社長は、IoT(Internet of Things)やAI(人工知能)を活用することや、独自技術のLED(発光ダイオード)ヘッドなどの強みを最大化するなど、生き残りを賭けた戦略を打ち出す。売上高の海外比率が7割を占める同社。グローバルを視野に入れた来年度(2018年3月期)以降の中期経営計画(中計)の策定を急いでいる。
LEDやグループのテクノロジーをレバレッジ
──コンサルタント会社出身で沖電気工業に入社し、今年4月にOKIデータの社長に就任しました。まずは抱負を聞かせてください。 14年度(15年3月期)は沖電気工業グループのなかでも、いい成績を残しましたが、それが変調してきたのが昨年度。プリンタ業界はコピー機を含め14年をピークに落ち込みシュリンクしました。そういうなかで、私に期待されていることを、私なりに整理しますと、マーケティングや販売の改革だと思っています。
──前社長が製造・開発の部分のコスト削減などで成果を上げましたので、波多野社長は販売面の強化をすると。 OKIデータは、売り上げの7割を海外で占めています。国内市場だけでなく、海外に展開する多くの販売会社(販社)やプロモーションの改革、グローバルに通用する製品ラインをどう構築するか、といったことを改革します。
──野村総合研究所などを経験されています。コンサルタントとしての視点でプリンタ業界をどうみていますか。 ゼロにはならないにしても、紙に印刷する需要が減ってくることは間違いないでしょう。それに対して、サプライヤの数が多すぎて供給過剰になっている。業界内の合従連衡は不可避でしょう。資本力のあるコピーメーカーの動向をみていますと、プリンタやコピーの販売だけでなく、違うビジネスを展開し新規ビジネスを模索しています。コピーよりプリンタ主力のメーカーでは、例えば、レックスマークは(中国の珠海艾派克科技に)買収されます。世界的にみて、各社各様に次の時代を模索しています。
──厳しい業界環境ですが、OKIデータはどう戦いますか。 現在、来年度(2018年3月期)からの中計を策定中ですが、業界統合が進むなかで、生き残る戦略を真剣に考えています。長年事業をしてきていますので、弱みばかりでなく、強みもあります。強みは大きくわけて三つありますが、それぞれをレバレッジする戦略を検討しています。
──具体的には、どんなことをレバレッジするのでしょうか。 一つはLED(発光ダイオード)です。二つ目は、沖電気工業グループが情報通信の会社であるということで、バックボーンとしてあるテクノロジー・リソースをレバレッジします。この先10年で、IoTやAIはあたりまえになる。すでに競合各社が取り組んでいますが、当社も当社なりにプリンタにIoTやAIなどを組み込んだソリューションをつくります。最後は、世界の拠点をレバレッジします。いまはグローバルでガバナンスが利いておらず、つくったモノを各販社に売ってもらう“おまかせモデル”になっている。市場が伸びている時はいいです。だが、逆風が吹いていると、拠点ごとにメリハリをつけたり、新興国の入札案件のスクリーニングを拠点任せにしているのを改めたり、グローバルを標準化しなければなりません。

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