コンサルティングサービスに着手
──今年3月の時点で前年比8%増ということですが、どの事業が伸びているのですか。 今年3月まではアプライアンスの「NetBackup」を拡販することに力を入れました。これは、当社を改めて知ってもらうブランド力の向上、またシンプルで性能の高い製品によって販売パートナーに扱いやすさを訴えるという考えからです。このアプライアンスの販売が昨年末から今年初めにかけて芽が出てきた。また、クラウドメールアーカイブサービス「Enterprise Vault.cloud」の案件も出始めました。
──引き続き好調ということで、課題はありませんか。 課題というか、これはチャレンジになるのですが、今後はコンサルティングサービスの提供を拡大しようとしています。当社では、「情報ガバナンスアドバイザリーサービス」と呼んでいるのですが、これは企業による情報管理に関する実態調査をもとにコンサルティングサービスを提供するというものです。例えば、調査によると世界の企業が保有しているデータのなかで、価値がわからない「ダークデータ」といわれているデータが52%、ビジネス上で重要なデータが15%という結果が出ました。一方、ユーザー企業のなかでそのことを理解しているケースはほとんどない。どのデータが重要なのかがわからない状況なんです。それを、コンサルティングを行って可視化するのです。まだ日本では始めたばかりなので、今は本社から専門要員を呼んでユーザー企業を開拓しています。
──一般的にダークデータが52%ですと、コンサルティングによって不要なデータとなればストレージ機器が売れなくなる。バックアップ関連製品も売れなくなってしまうとも考えられますが。 それは違います。ユーザー企業にとって、どのようなデータなのかを可視化するのは必要ですので、むしろ感謝されますし、バックアップ関連の製品・サービスを提供する販売パートナーにとってもメリットがあります。というのも、コンサルティングをしていくなかで、今後、効率的にデータを可視化していきたいという要望がユーザー企業からあったりするのですが、そういった場合は、販売パートナーに紹介して製品・サービスを提案してもらう、というような流れが出てくるのです。
──コンサルティングのノウハウを販売パートナーにも提供するのですか。 まずは、当社がコンサルティングを行って、販売パートナーによる製品・サービスの提供拡大につなげる、というサイクルを構築します。次に、当社で成功事例を多くつくって、販売パートナーがコンサルティングサービスを提供できる環境を整えていきます。
実際、米国ではコンサルティングサービスをヘテロジニアスな環境など大規模なシステムを構築している企業に対して提供していたのですが、データ量の拡大とともに、今はユーザー層が広がっています。当社におけるコンサルティングサービスの売上比率はこれからですが、近い将来、15%くらいまでには達すると捉えています。製品・サービスの提供だけではない新たなビジネスとして、大きく化ける可能性を秘めているのです。
リセラーへのサポート充実で拡大
──分社・独立によって、シマンテック時代と比べれば製品領域が小さくなったわけですが、このことに対して販売パートナーはどう捉えていると考えていますか。 お蔭様で、さらにサポートが充実したという声が多いんです。それは、そうですよね。その分野に特化したのですから。実は、セキュリティと情報管理の両製品を扱うケースが多かったのは、ディスリビュータだったんです。ですので、これまではディスリビュータとの関係を深めることに力を注ぎ、サポートが充実したという評価を受けたんです。今年はリセラーへのサポートも手厚くしていきます。
──具体的には? ディストリビュータと合同セミナーを各地で開催することを検討しています。また事例を当社で精査して、ほかのリセラーが売れるように横展開することも模索しています。地方は、バックアップのニーズが高まりつつあるという状況ですので、まだまだ需要を掘り起こせる。リセラーにとっては、新規顧客を開拓できる可能性があるということです。
──地方の話が出ましたが、国内全体における情報管理市場の可能性については、どうみていますか。 景気が決していいとはいえませんが、企業内のデータ増加や、災害などで必要なデータがなくなってしまうことへのユーザー企業の不安感などを踏まえて、まだまだ市場は拡大するでしょう。情報管理は、ますます認知されるとみています。先ほど地方の話をしましたが全体的にバックアップが浸透しているとは決していえない。
そのような状況のなか、以前(分社・独立前)と比べて、製品開発や販売パートナーへの支援で小回りが利くようになった。システムインフラの観点からではなく企業全体の情報を管理し、ソフトウェア、アプライアンス、コンサルティングサービスなどを提供する会社として、市場で主導権を握っていきます。

景気が決していいとはいえないが、企業内のデータ増加や、災害などで必要なデータがなくなるリスクなどユーザー企業の不安感を踏まえて、まだまだ市場は拡大する
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