3年で3倍の成長を目指す
──改めてうかがいますが、上場の狙いは何なのでしょうか。 一番は優秀な人材の確保です。やはりパブリックな会社になることで知名度が上がり、社会的信用度も増します。後は資金調達のしやすさですね。
──新しい分野への挑戦も考えておられるのですか。 基本的に学校教育ICT市場にワンセグメントで勝負するということしか考えていません。また、「BtoCはやらないのか」とよく聞かれるのですが、コンシューマはやらないです。ここはすでに大手さんがいますので、われわれがそこに参入して勝てる見込みはないですよ。学校教育ICTはニッチな市場ですし、かなり専門性の高いところですから、ここを深掘りしていくほうが間違いなく商機があります。
──確かに、教育ICTを専業にしている御社のような会社はオンリーワンですよね。 そうなんです。他社にはないんですよ。
──今後、どのようなことに力を入れていきますか。 とくに海外に向けた事業をやっていきたい。東南アジアを中心として22か国に複数の言語に対応した自社プロダクトを輸出していますが、3年ほど前のタイの洪水や政権不安のあたりから、少し調子が悪くなってきています。一時はよかったのですが、今は売り上げは全体の数パーセント程度。また、国連加盟国が約190か国あるなかで、われわれはまだ22か国というレベルですから、しっかりと展開していきたいですね。
──売り上げに対する目標を教えてください。 3年で3倍くらいはいきたいと思っています。2020年まで、後4年しかない。全速力でいきますよ。

学校教育ICT市場はニッチな市場ですし、かなり専門性の高いところですから、
ここを深掘りしていくほうが間違いなく商機があります
<“KEY PERSON”の愛用品>リモワは「唯一の趣味」 ドイツのスーツケースメーカー「リモワ(RIMOWA)」のアタッシュケースをふだんから持ち歩く。リモワが好きで、ほかにも六つほどもっているとのこと。アタッシュケースといえばシルバーが多いが、黒色がお気に入りだ。

眼光紙背 ~取材を終えて~
長きにわたってチエルの経営に携わってきた川居社長。これまでを振り返り、「一番きつかった」と話すのが、市町村合併のとき。3200ほどあった自治体が1800ほどまで段階的に減るなかで、自治体は「いずれ合併するから」と投資を控えたからだ。現在は一転、政府の方針として、教育環境のICT化が推進されており、外部環境は良好。この機を逃さず上場し、ビジネスの強化を目指す。
今後のICTを活用した学校教育の方向について、「ナビゲーションシステムになるのでは」と話す。つまりは、あらゆる人の学習履歴がデータ化され分析されることで、人がある目標に向かって勉強するとき、「こういうタイプの人はこういう教材でこういう勉強をすればいいのでは」ということが明示され、一人ひとりに適した学習法がICTによって実現するのではというのだ。そのためのテクノロジーとして、AIに注目しているという。2020年を見据え着実に事業を展開しながらも、いずれ来るべき新たな商機へ備えている。(宙)
プロフィール
川居 睦
川居 睦(かわい むつみ)
1962年11月生まれ。タカギエレクトロニクスを経て、93年、アルプス システム インテグレーション(ALSI)に入社。99年、デジタルインスティテュート(現チエル)取締役、2002年、同社代表取締役社長に就任。05年、ALSI取締役。06年より現職。
会社紹介
1997年に、旺文社の100%子会社「デジタルインスティテュート」として設立。99年にアルプス システム インテグレーション(ALSI)が資本参加。02年、旺文社デジタルインスティテュートに社名変更。06年、ALSIの教育事業部門を統合し、社名をチエルに変更。教育ICT専業ベンダーとして、市場では確固たる地位を築いている。16年3月、東京証券取引所JASDAQに上場。7月、沖縄エリアで事業展開する沖縄チエルを設立した。