――他の業種についてはいかがでしょうか。 例えば教育向けでは、大学図書館向けの管理システムが国内約3分の1のシェアを獲得しており、お客様や販売チャネルはすでにもっています。大学も全入時代で、学生獲得のためのサービス向上という考え方がかなり浸透してきていますので、チャンスはあると考えています。製造向けに関しては、リコーそのものが製造業ですので、社内で実際に展開しているものをご提案できます。構内物流効率化のためのコンサルティングや、工場で実際に使用している無人搬送車などもすでにご提案を行っています。フェアなどでお客様とお話しをするなかで、「ここに事務機の『リコー』じゃなくて、総合電機メーカーの看板がかかっていてもわからない」と言われたことがありますが、まさにそこがねらいで、一般事務だけではなく、業種の現場の課題を解決できるソリューション提案が今後のカギになります。
ICT領域専門の責任者を配置
──ソリューション提案というところで、ボリューム的には複合機やプリンタを中心としたドキュメント系が今でも当然大きいとは思うのですが、その次に柱となる要素としては何か考えられますか。 一つのキーワードになるのがコミュニケーションだと考えています。中小企業のPBXやビジネスホンは今でも多く販売していますが、逆にいえば、通信関連ではそれ以外の部分があまりやれていなかった。通信事業者のインフラのうえに何かのサービスやアプリケーションを乗せて提案するという形態には可能性があると考えていますし、ワークスタイル改革やセキュリティには確実な需要があります。
──ICT領域でのビジネス拡大に対応するために打たれた施策はありますか。 今まで弊社でICTビジネスに関わる部署は、ICT技術本部やビジネスソリューション事業本部など複数に分かれていましたが、本部が横並びだと、どうしても互いの部署の顔色をみながらビジネスを進めるような形になってしまうため、8月に「ICT事業セクタ」を設け、セクタ長を中心に経営判断を行うようにしました。変化の速いICTの世界で、ヒト・モノ・カネ・情報の経営資源をどう投入するかは、やはり誰かが専門的にみて意思決定を行っていく必要があります。
──ITの世界ではAIやIoTが盛んにいわれていますが、何か実になりそうなものはありますか。 リコーとしては、IBMの「Watson」をインタラクティブホワイトボードと組み合わせて、書いたものの議事録を自動的に作成したり、翻訳して相手に伝えたりといった研究テーマにチャレンジしています。弊社でも複合機向けに自動翻訳サービスをオプションで提供していますが、そのような機能も将来は個別の製品にすべて乗ってしまうでしょうね。劇的に世の中が変化するのに合わせて、速く市場性を見極めて、速く準備をして、速く市場に投入していく、そのスピードがすべてだと思います。
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