期待と現実のギャップを埋める
──なんといっても、最近はブロックチェーンへの取り組みが注目されています。日本ブロックチェーン推進協会(BCCC)の立ち上げと理事長への就任、国産プライベートチェーン「mijin」を擁するテックビューロとの資本業務提携などの動きは、御社の株価にも大きく影響していますよね。 ブロックチェーンはいますごく脚光を浴びているので、みんなが理解したい、使いたいと思っているけれども、すごく“深い”技術なんです。直接アプリケーションレイヤの人たちが使おうとすると、ギャップが大きすぎる。ASTERIAのつなぐ先をブロックチェーンにも広げて、そこのギャップを埋めるのがインフォテリアの役目だし、BCCCは、情報提供など、普及推進のための活動を地道にやっていきます。
──BCCCの活動は順調ですか。 もともと年内100社の会員を集めたいと考えていましたが、3か月前倒しでほぼ100社に到達しています。さまざまな属性の会員が集まっていて、ブロックチェーンに対する期待や関心の大きさの表れだと考えています。
──情報提供は重要でしょうが、例えばユーザー企業にブロックチェーンを理解してもらうのは少し難しそうです。 まあ、正直に申し上げて難しいですね。FinTechのコア技術といわれていることもあって、金融機関の方からブロックチェーンについて教えて欲しいというお話はよくいただきますが、いうなれば、インターネットの利便性を享受しているコンシューマにTCP/IPを説明しているような感じになってしまう。それでも、そのギャップは解消しなければならないし、それが普及への一歩につながると確信しています。そこで理解できない、使えないと思われてしまうと、普及の阻害要因になりますから、BCCCとしては相当の努力が必要です。それでも、未来を信じている企業が組んで体制を整えていることの意義は大きいと思っています。今後、実証実験などの知見が共有されて、ユーザー系の会員が増え、部会もつくれるようになると、普及の大きな後押しになりそうです。
──現時点の実証実験の結果をみて、エンタープライズITでの実用性に疑問符を付けるような論調も時々見受けられますね。 ブロックチェーンは夢が大きい技術です。その夢と現時点での状況とのギャップもまた埋めていかないといけない。われわれプロバイダ側は、そこの時間軸を踏まえて話をしているつもりではあるんですが、夢の部分だけを聞いて「そんな馬鹿な」という反応をされることもある。でも、こういう新しい技術の現在だけを切り取って、スナップショットで評価して何の意味がありますか。クラウドだってインターネットだって、最初は否定されまくっていたわけですよ。でも、いまやなくてはならないものになった。同じことがブロックチェーンでも起きます。
国産の破壊的プレイヤーを誕生させたい
──平野さんは以前、既存プレイヤーを駆逐するような破壊的サービスが出てこないと、なかなかブロックチェーンのような新しい技術は浸透しないともおっしゃっていました。 米国ではシリコンバレー対ウォールストリートの戦いの構図がありますが、日本はメガバンクとスタートアップが組んで、いまだに護送船団方式で一生懸命やっていこうという感じですね。こういう形態は妥協の産物がたくさん出ます。ただ、金融庁も金融機関に発破をかけてブロックチェーン、FinTechをドライブしている状況があって、日本では珍しいことです。いまの金融の国際競争の状況をみれば危機感を覚えるのは当然でしょうが。メガバンクも、いまでこそ銀行法で守られていますが、それがいつまで続くかはわかりません。仮想通貨にしろ、価値の交換そのものにしろ、新しいやり方がどんどん出てきて、法律の網にかからないようなものがいっぱい出てくる。経済の原点は物々交換ですよ。これを制限する法律なんてできっこない。しかし、デジタル化で、どんどんこの原点に戻っている傾向があります。金融庁もそれをわかっているんでしょうね。
──BCCCとして破壊的プレイヤーの誕生を支援するつもりは? やはり、そういうことをやりたい。日本のスタートアップに圧倒的に足りないのは資金ですので、彼らの資金調達支援も活動の狙いの一つに掲げています。世界に出て行ける、世界レベルのスタートアップを増やしたいですね。
──インフォテリア自身も海外ビジネスを指向されています。成果はいかがでしょう? 開発の国際化はうまくいっていますが、売上的にはまだまだで、2%程度ですね。でも、2018年には海外売上比率を20%まで上げるということを中期経営計画で正式に目標として掲げました。

クラウドだってインターネットだって、最初は否定されたわけですよ。
でも、いまやなくてはならないものになった。
同じことがブロックチェーンでも起きます。
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