──何で伸ばしますか? 新しい製品を三つ、今年度中にリリースします。ASTERIAの流れを汲み、IoTでのエッジコンピューティングの普及を見据え、データだけでなく制御も含めてエッジ同士をつなぐ「Gravity」、Handbookの流れを汲み、中央管理的ではないコンテンツシェアを実現する「Tristan」、そしてIoTのアップビルダー「Hawking」です。これらは最初から世界戦略製品として設計しているので、かなり期待しています。後は、M&Aですね。そのために30億円の資金調達をしています。
──シンガポールに移住したことは、経営に何か影響を与えましたか。 これは大きかったですね。大胆にハンドルを切れるようになりました。ブロックチェーンも上場企業のなかではインフォテリアが一番にコミットしましたが、それはシンガポールで金融機関のCIOなどと話していて、彼らが実用を本気で考えていることを肌で感じたからこそ決断できたんです。シリコンバレーも似たところがあるでしょうが、グローバルなビジネスがものすごいスピードで動いていく環境に身を置くことは、経営の意思決定をするうえで本当に役に立っています。
<“KEY PERSON”の愛用品>ソムリエナイフも緑! 2007年、マザーズに上場時に、リードインベスターが上場益で新橋にワインバーを開いてくれたことがきっかけとなり、自身もワインを嗜むように。コーポレートカラーのグリーンのソムリエナイフを一か月かけて探し、愛用している。

眼光紙背 ~取材を終えて~
自社の事業、ブロックチェーン、日本のスタートアップを巡る環境……。何時間でも語り続けてくれそうな熱さを感じるインタビューだった。印象的だったのは、「スナップショット」で新しい技術や新しいプレイヤーを否定する日本の文化を変えたいと再三口にしたこと。ハードなチャレンジですね、と問いかけたところ、「ハードルを越えるという志があればできる。志すら低かったら、現実にハードルを越えるなんて無理」と即座に返された。どこまでも熱い。
今年、大地震に見舞われた熊本県の出身。困難なチャレンジを是とする気質は地元で培われたという自覚があり、恩返しとして復興のための活動にも率先して取り組んでいる。ビジネス上のつき合いも含めて活動の輪に巻き込んでいるため、「インフォテリアの社長としての平野と、個人の平野の切り分けがここでは正直できていなくて、上場企業としては危うさがあるかも」と笑うが、それもまた平野さんらしい。(霹)
プロフィール
平野 洋一郎
平野 洋一郎(ひらの よういちろう)
1963年、熊本県生まれ。熊本大学工学部を中退し、83年、キャリーラボを設立。日本語ワードプロセッサの開発に従事した。87年、ロータス(現日本IBM)に入社。ロータス戦略企画本部副本部長として、表計算ソフトからグループウェアまで、製品企画とマーケティングを統括。98年、インフォテリアを創業し代表取締役社長CEOに就任。現在に至る。
会社紹介
1998年に、国内初のXML専業ソフトウェア開発企業として創業。主力製品のEAI「ASTERIA(アステリア)」は、EAI/ESB製品の国内市場シェアで2006年から10年連続でトップシェア(テクノ・システム・リサーチ調べ)を誇る。また、09年に発売したスマートデバイス向け情報配信・共有プラットフォーム「Handbook」も導入件数が800件を突破し、SaaS型モバイルコンテンツ管理市場のトップシェア(アイ・ティ・アール調べ)を獲得。中心事業の一つに成長している。昨年度(16年3月期)の売上高は15億9200万円。