“所有”に価値を見出さなくなっている
――名前をあげられた大企業は、いずれもビジネスモデルが近年大きく変わっている企業ですね。 事実として、15年前の「フォーチュン500」企業の52%がすでに消えているんです。生き残った企業は、サブスクリプションビジネスへの転換というトレンドを現実として受け入れた企業といえるでしょう。生き残った企業の一社がGEですが、彼らはもはや電球や電源機器などのプロダクトを売る会社ではなく、サブスクリプションのサービスを売るデジタル企業になっています。デジタル化が産業をブーストするということを証明した存在ですよね。ご存じのとおり、IBMも同じです。メインフレームやラップトップPCを売る会社ではなく、Watsonに代表されるデジタルサービスを売る会社になっています。
新興企業を見渡しても同様ですね。アマゾン・ドット・コム、グーグル、アップル、セールスフォース・ドットコムもそうですが、その次の世代のUber、ネットフリックス、BOX、Airbnbも、成長している企業の共通項は、顧客の変化をすくいとって、サブスクリプション型ビジネスでニーズに応えたというところです。
──顧客側の変化とはなんでしょうか。 いまの消費者は、商品を所用することではなく、“結果”を得ることを期待しているんです。例えば、車を買うことに価値を見出すのではなく、Uberなどを使って、適切な投資で効率的にA地点からB地点に移動できたという結果にこそ価値があると考えているということですね。さらに、(マスに向けてのサービスではなく)パソナライズされたサービスを求めています。
先ほど名前をあげたような成長著しい企業は、そのことにみんな気がついています。成功を収めるためには、プライシングモデルも、マーケティングのやり方も変えなくてはならない。ビジネススクールで学んだ財務の知識や売り方のルールが通用しない時代になってきているんです。以前は、製品をなるべくたくさん、さまざまなチャネルを介して顔がみえない人に売ろうとするビジネスが主流でした。しかし、サブスクリプション型の新しいビジネスモデルになると、サブスクライバーを中心に据え、彼らが求める結果を導き出すためのエクスペリエンスをどう提供するかという考え方が必要になります。
──それを支えるシステムがZuoraのRBMということなのでしょうが、従来の情報システムにはない新しい領域の商材と考えていいのでしょうか。 よく対比されるのはERPです。実際、私たち自身もSAPやオラクルのERPを競合だと考えています。サブスクリプション型のビジネスモデルにシフトした企業が、企業内の業務プロセスもサブスクライバー中心型で再構築しようとすると、課金、契約管理、請求・回収、売上計上、分析などのモデルも変わります。RBMはこれらをすべてカバーして、顧客とのリレーションシップを管理するプラットフォームになっています。しかし、既存のERPでは同じような対応ができないんです。ERPがフォーカスしているのは、原料調達とか在庫管理、ロジスティクスなど、プロダクト販売型のビジネスを前提とした機能です。しかし、サブスクリプション型のビジネスをやっている企業はそういうものに依存しないので、ERPとはマッチせず、RBMにどんどん移行するという状況が生まれています。
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