市場規模は10兆円以上
──RBMはサブスクリプションビジネスのための新しい基幹システムといえそうですが、どれくらいのビジネスチャンスがあるとみていますか。 サブスクリプション管理システムの市場規模は、10兆円を超えると考えています。また、あらゆる業種でサブスクリプション化は進むと申し上げましたが、直近でとくに有望な分野としては、IT(クラウド)、B2C、製造業(IoT)の三分野の顧客開拓に注力していく方針です。
──日本市場の可能性についてはどうみますか。 エキサイティングな市場だと思っています。具体的に、世界で2番目、6800億円のサブスクリプション管理システムの市場があるとみています。1年半くらい前に日本法人を設立して本格的に事業を始めましたが、さまざまな業種業態で基盤になるお客様を獲得することができたと思っています。freeeや弥生、ウイングアーク1stなど、多くのすばらしいテクノロジー企業がサブスクリプションエコノミーを享受し、当社製品を使ってくれていますし、有力なメディア企業でも導入実績があります。一方で、日本はこれもわれわれの注力分野の一つである製造業も強く、日本経済全体を長年牽引してきた実績もあります。ここにもIoTによって大きな成長のチャンスがあります。
ということで、私たちは日本での未来は明るいと考えていますし、大きな変革を後押しできることに対して、とてもワクワクしていますよ。

サブスクリプション型ビジネスで成功を収めるためには、
プライシングモデルも、マーケティングのやり方も変えなくてはならない。
過去のルールが通用しない時代になってきている。
──三井情報や日立ソリューションズがSIパートナーに名前を連ねていますが、パートナーエコシステムは拡充していく方向でしょうか。 もちろんです。パートナーこそが日本のビジネスのカギを握ります。現実には、既存のウェブサイトやERP、CRMなどとのインテグレーションが必要なケースがほとんどで、お客様のアーキテクチャに合うように導入するには、彼らの活躍が不可欠です。幸い、Zuoraに関心をもっているSIerはたくさんいらっしゃるようですので、随時パートナーエコシステムの拡大には取り組んでいきます。
<“KEY PERSON”の愛用品>唯一必要なビジネスツール サブスクリプションビジネスの牽引者らしく、「プロダクトの所有に興味はなく、スマートフォンさえあればあらゆるものがサービス形式で利用できる」と話すツォ氏。“超ハイスペック”が売りの中国・ワンプラス社製品を愛用している。

眼光紙背 ~取材を終えて~
飄々とした語り口で、常に冷静という印象。外資系ベンダーのトップには珍しく、柔らかい握手をする人だった。しかし、「すべてがサブスクリプション化した世界を目指す」という思考は、ラジカルで振り切れている。だからこそといえるのだろうか、Zuoraは次代のスタンダードとなるような新しい価値をもつサービスを世の中に定着させ得るかもしれないと感じさせるインタビューだった。
本文ではスペース上紹介できなかったが、同社製品導入の成功事例として、英フィナンシャル・タイムズが英国のEU離脱問題が起こったときにウェブサイトのアクセスが増えたことをビッグチャンスと捉え、有料記事を無料で開放したうえで購読キャンペーンを立ち上げ、成果をあげたことも説明してくれた。「あなたがたのようなメディアに、私たちの価値と可能性を正確に理解してほしい」というツォCEOの言葉には、正確な記事を書けという叱咤激励だけでなく、日本のメディアのビジネスモデルはいまのままでいいのかという問いかけの意も込められていたと思うのは邪推というものだろうか。(霹)
プロフィール
ティエン・ツォ
ティエン・ツォ(Tien Tzuo)
コーネル大学で電気工学を専攻。スタンフォード大学経営大学院で経営学修士号を取得。セールスフォース・ドットコムの11番目の社員として同社黎明期から活躍した。9年間の在籍中、テクノロジー、マーケティング、戦略部門などの経営幹部職やCMO、CSO(最高戦略責任者)を歴任し、製品管理部門やマーケティング部門を立ち上げた。独自の請求システムを構築した実績もある。2007年にZuoraを創業し、CEOに就任。
会社紹介
サブスクリプション型のビジネスモデル構築と収益向上を支援するSaaS型プラットフォーム「リレーションシップ・ビジネス・マネージメント(RBM)」を提供する。従来のERPやCRM、販売管理などのシステムでは対応できない、サブスクリプションビジネスのための業務、具体的には、プライシング、見積り、ウェブ販売、契約管理、請求・回収、売上計上、レポート・分析などをサポートする。セールスフォース・ドットコムからスピンアウトしたかたちでティエン・ツォが創業したが、セールスフォース・ドットコム創業者のマーク・ベニオフ会長兼CEOも同社に出資している。2015年9月に、日本法人 Zuora Japanを設立。グローバルで12の拠点を置き、従業員数は600人規模に成長している。