地域に根づいたソリューションの提供へ
──IoT時代になると、パートナーシップのあり方も変わってくるのですか。
組み込み関連事業がメインだった時と比べると、パートナーシップが大きく変わってきているといえます。インテリジェント・プラネットの実現を果たすため、当社が取り組んできた、もしくは取り組むことを三つのフェーズに分けるとしたら、10年から第1フェーズとして「IoTデバイス」をテーマにIoT時代に適したハードウェアのラインアップ拡充を進めてきました。今は第2フェーズの「IoT SRP(Solutions Ready Platforms)」に入っており、ハードウェアとソフトウェアを組み合わせたソリューションとして提供する段階となっています。そのため、SIerとのパートナーシップが重要だと捉えています。第3フェーズは「IoTクラウドサービス」として、クラウド事業者のサービス拡大とともに、SIerがさらにビジネスを伸ばす段階に入ります。だからこそ、メーカーとのワールドワイドレベルでのパートナーシップ、そしてSIerとのパートナーシップが重要だと捉えているのです。
──IoT時代には、さまざまなベンダーとのパートナーシップがさらに重要になってくるということですね。今後、SIerとのパートナーシップを強化していくために、とくに力を入れていることはありますか。
47都道府県にIoTを広めていくため、「Advantech IoT47プロジェクト」というイベントを開催しています。イベントでは、各地域の特性を生かしたソリューションを披露します。これまで4月に大阪で「インダストリー4.0フォーラム」、5月に東京で「テクノロジーリーダーシップカンファレンス」として行ってきました。6月に開催する横浜でのイベントでは、「みらい都市・横浜」として「スマートシティ」をテーマに据えています。地域に根づいたソリューションを披露するのは、大きなビジネスになり得る可能性が高いので、各地域でSIerとパートナーシップを組んで訴えていきたい。
──日本でIoTを普及させていくための課題はありますか。
個人的には、欧州や米国などと比べると大きな形でIoTが普及していないように感じています。日本では表にみえないところでIoTに関する取り組みが進められている。そこで、各地域でIoT関連のソリューションを具現化していく。SIerそれぞれの持ち味を生かしたり、お客様がソリューションを評価したりと、現場の声が大事になってくると考えています。Advantech IoT47プロジェクトが、日本のIoT普及に寄与するイベントになるよう、取り組んでいきます。
IoTでは、各社それぞれの強みを集結して
新しいソリューションを創造することが重要となります。
各地域でSIerとパートナーシップを組んで訴えていきたい。 <“KEY PERSON”の愛用品>アイデアマンに欠かせない 必ず持っているのは、ペン。「思いついた時にすぐメモをとる」ことが日常茶飯事だからだ。メモしたアイデアが、後に大きな事業に発展する可能性がある。ブランドにはこだわっていないが「CROSSは、しっくりとくる」とのことだ。

眼光紙背 ~取材を終えて~
数々の外資系企業を渡り歩き、すべての企業で業績を伸ばしてきた。アドバンテックでは、ワールドワイドの成長をはるかに上回る数字を記録。本社から日本法人が一目置かれる存在になっていることから、日本でつくり出したアイデアがワールドワイド全体の戦略になることも多い。
その原動力は、「人」。「長きに渡って働いて会社の成長に寄与している社員が多い」と捉えている。社長自身も、「凡事徹底」を座右の銘に、何でもないあたりまえのことを徹底的に行っている。地道な努力でビジネスを拡大しようとする雰囲気が社内に漂って今のアドバンテックがある。
「できないことを並べるより、今できることを始めよう」と「Advantech IoT47プロジェクト」の実施に踏み切った。このプロジェクトを通じて、果たして47都道府県にIoTが普及するのか。期待がかかる。(郁)
プロフィール
マイク小池
(まいく こいけ)
1988年、サンダーバード国際経営大学院で経営学修士号(MBA)を取得後、米インテルに入社。90年、米アダプテックに入社。93年、日本法人設立のため東京に赴任。97年に韓国法人を設立し、日本および韓国(北アジア)のセールス・ディレクタに就任。2004年、アジレント・テクノロジーに入社。07年8月、米ソニックウォールに入社、10月に日本支社代表に就任。12年1月、台湾アドバンテックに入社、バイス・プレジデントに就任。同年7月、アドバンテック日本法人の社長に就任。現在に至る。
会社紹介
本社は1983年に台湾で設立。従業員数は約8000人。23か国、95都市でビジネスを展開している。97年に日本法人を設立。マザーボードや産業用向けコンピュータなどを開発するメーカーとしてビジネスを手がけていたが、2010年からIoT関連事業に着手し、自社のハードウェアを核に他社のソフトウェアやサービスを組み合わせた新しいソリューションの創造に力を注いでいる。これまではハードウェアのラインアップの充実に重きを置いてきたが、現在はとくにSIerとのパートナーシップを深めることに力を注いでいる。