アプライアンス製品を“武器”に中堅・中小企業(SMB)市場で高いシェアを獲得してきた米バラクーダネットワークスの日本法人、バラクーダネットワークスジャパンの執行役員社長に今年3月、大越大造氏が就任した。複数のベンダーの代表を歴任し、バックアップやストレージの業界を知り尽くす大越社長。3年後に国内売上高を現在の3倍にすることを目標に掲げ、セキュリティやクラウドなど、新たな市場を開拓する。
ポテンシャルの高いセキュリティを攻略
──バックアップ、ストレージの製品を扱う外資系メーカーを多く経験されてきました。今回、次のステージとしてバラクーダネットワークスジャパンを選択した理由はなんですか。
バックボーン・ソフトウエアに在籍していた頃の主力製品「NetVault Backup」に関わってから約18年、バックアップオンリーで仕事をしてきました。この先、バックアップ、ストレージの領域もやるのですが、個人的には、違うマーケット、とくにセキュリティに非常に興味をもっていました。自分のバックグラウンドであるバックアップ、ストレージの知識やノウハウを生かしながら、セキュリティも関われる場所がここでした。バックアップ、ストレージ以上にセキュリティ・マーケットのポテンシャルの高さに魅力を感じたんです。
──この領域は、外資系メーカー中心に競合が多く存在しています。スパム対策製品などの製品が国内出荷台数で年間No.1になるなど、高いシェアを獲得している理由を分析してください。
当社の製品は、アプライアンスですのでターゲットをSMBに絞っています。その層のIT担当者が担うITのハンドリングを楽にすることに貢献できているということです。いま、ハイパーコンバージドインフラのニーズが高まっています。それと同じように、サーバーの世界も、ストレージの世界も、スタック型のアプライアンス製品が流行っています。それを、SMBマーケットに対し、当初から提供し続けていますが、ここにきてタイミングよくヒットしています。
──バックアップ、ストレージで経験豊富な大越さんが社長に就任したということは、新たな展開があるのでしょうか。
当社は、2005年の日本法人設立から12年、事業を展開していますので、パートナーともしっかり手を組めていますが、まだ伸ばせていない領域が多くあります。とくにクラウド関連とバックアップ、アーカイブ系にポテンシャルがあります。まずは、そこを伸ばす役目を果たしていきます。
──就任して間もないですが、成長領域の攻略を含め、短期的には、どのような戦略をお考えですか。
バラクーダネットワークスは、外からみるとスパムメール対策の製品を出す会社というイメージが強いと思います。もちろん、スパムメール対策のテクノロジーもすぐれています。しかし、それだけではなく、バックアップ、アーカイブ、ファイアウォール、ウェブアプリケーション・ファイアウォール(WAF)のマーケットが大きいので、その領域で提供している当社製品とその強みをブランディングしたい。まずは、スパム対策のバラクーダではなく、「セキュリティ、ストレージ、バックアップ、アーカイブのバラクーダ」という認知を市場に定着させることを、ここ1年でやっていきます。
Office 365で、新ソリューションを展開
──その認知度を上げ、市場を開拓するうえでの取り組みとしては、どんな活動を展開するのでしょうか。
当社としては4年ぶりとなるプライベートイベントを計画しています。これから主流になる製品のローンチ発表と、それに対するパートナー支援プログラム、エンドユーザーが得られるメリットなどを提示します。当社の顧客は、スパムメール対策製品を導入していただいている顧客で占められています。「ランサムウェア対策」などで導入が進んでいます。今後、もっとも大きなマーケットとして捉えているのが、「Office 365」環境の領域になります。
──Office 365環境のセキュリティ、アーカイブ、データプロテクションを強化するクラウド・サービスとして「Barracuda Essentials
for Office 365」を出しますね。なぜ、その環境の領域をターゲットにするのでしょうか。
企業システムのなかで、もっともオンプレミスからクラウドに移行しやすいのが、メール資産だと思います。クラウドに移行する際、従来通りのセキュリティの確保が必要になります。そこに対し、セキュリティと、プラスしてバックアップ、アーカイブを提供できます。当社の場合は、メールのプロテクションとウイルスやランサムウェアの対策、これに加えてバックアップ、アーカイブをワンストップで提供できます。
──Office 365の領域は、競合他社もターゲットにしていますが、それと比較して御社の優位性はどこにありますか。
セキュリティの競合会社と対比して、これら幅広いカテゴリの製品をワンストップで提供できるのは、当社だけです。セキュリティとストレージのライセンスを別々にするのではなく、一緒の機能であり、スイートパッケージとして提供するという戦略をとっています。
米国では、「Barracuda Essentials for Office 365」を昨年秋にリリースして、ビジネスがかなりうまくいっています。このソリューションは、メールのセキュリティとアーカイブ、「SharePoint」と「OneDrive」を含めたデータのバックアップがセットでつきます。とくに、クラウドに移行する顧客にとっては、全部データがクラウド側に移行するという不安があります。その不安に対し、通常のオペレーションはクラウドでやり、その代わり、データ自身をアーカイブで手元に置くという構成にすることができます。いままで、クラウド移行を躊躇していた顧客に対し、いいプッシュ材料になります。
[次のページ]付加価値提供のリセラーを獲得