付加価値提供のリセラーを獲得
──大越社長は、バックアップの領域で複数のメーカーで実績を上げてきました。バラクーダのバックアップ製品は、競合と比べて、何が売りなんでしょうか。
バックアップに関しては、アプライアンスのラインアップを継続して提供します。製品というよりは、アプライアンス化することで、シンプルに利用を開始できる。当社の製品は、バックアップといっても、1TBから112TBまで、11モデルをアプライアンス製品として用意していますので、どのレンジの顧客にもあてはまる。日本法人の売上高は昨年、前年に比べ60%伸びました。日本法人で10年以上にわたりオペレーションしていますが、一気に業績を伸ばせた理由は、このアプライアンス製品の認知が拡大したことに起因しています。
──クラウド市場に向けた取り組みを加速させるようですが、これまではどんな展開をしてきたのでしょうか。
ワールドワイドでは、「Amazon Web Services(AWS)」「Microsoft Azure」「Google Apps」の各クラウドに完全対応しています。国内で密に組んでいるのが、マイクロソフトのMicrosoft AzureとOffice 365の連携になります。「Microsoft Azure Marketplace」には、マイクロソフトが推薦するアプリケーションに複数掲載されています。
──先ほど、パートナー戦略を見直すとおっしゃっていましたが、具体的にはどう変えるお考えですか。
いままでは、日本市場オリジナルのパートナー戦略をやってきました。ここで一度、きれいにしてワールドワイドのプログラムに沿った形にします。頑張っていただいたパートナーに、より利益が出るモデルに変えます。昔ながらの商流ですと、SIer、リセラー、ディストリビュータという形で混在しています。みなさまの役割に集中していただき、すべてのカテゴリのパートナーと利益を分け合えるようにします。
現在パートナーは10社あります。とくに、当社製品の販売に注力していただけるリセラーの数を増やします。当社製品を使ってプラスαの付加価値サービスを提供できるパートナーを多く獲得していきたいです。その上で、3年後には、昨年度(17年3月期)に比べ売上高で3倍、社員数も3倍を目指します。
スパム対策のバラクーダではなく、
「セキュリティ、ストレージ、バックアップ、アーカイブのバラクーダ」
という認知を市場に定着させる。 <“KEY PERSON”の愛用品>革の風合いある10年来の“相棒” 10年弱、使い続けている土屋鞄の二つ折り財布。「薄いつくりなのに、領収書がいっぱい入る深さ」と、ポケットにすっきり入るサイズで快適な使い心地が気に入った。大越社長の年輪とともに革の風合いが深まっている。

眼光紙背 ~取材を終えて~
短い言葉で端的に質問に対応する。筆者が大越大造・執行役員社長と出会った10数年前と変わらない語り口に、安心感を覚える。バックアップやストレージを提供する複数の外資系メーカーの日本法人代表を務めてきた。知識・ノウハウの蓄積では、この領域で日本に右に出る人はいない。
渡り歩いてきた各メーカーでは、日本市場のチャネルビジネスを築いた。大越社長が「入る前と後」では、パートナーとの関係性が深くなる。IT業界の人脈は広く、各販売会社の特質を理解している。
前職のメーカーは、日本市場で成長しつつあったため、もう少し長く務めると思っていた。しかし、当人は「セキュリティにポテンシャルを感じる」と、実績を捨てて次の挑戦へと動いた。
バラクーダでは、まずは3年、売上高を3倍にすることを目指す。成長著しい同社をどう導くのか注目したい。(吾)
プロフィール
大越大造
(おおこし だいぞう)
1969年1月、福島県郡山市生まれ、48歳。91年3月、山形大学工学部電子工学科卒業。06年5月、バックボーン・ソフトウエアの代表取締役社長。11年7月からは、同社を買収したクエスト・ソフトウェア日本法人の日本クエスト・ソフトウェアの代表取締役社長。13年2月にCommVault Systems Japanのエリアバイスプレジデント、15年11月にはヴィーム・ソフトウェアのカントリーディレクターに就任。エンタープライズ向けで世界的に著名なバックアップ、ストレージ、リカバリソリューションベンダーの代表を務めるなど、この領域で豊富な実績をもつ。17年3月1日からは現職。
会社紹介
セキュリティやネットワーク、ストレージなどをネットワークアプライアンスやクラウド・サービスの形態で提供する米国メーカー。2002年設立。本社はカリフォルニア州。13年にニューヨーク証券取引所上場。日本法人(バラクーダネットワークスジャパン)は05年11月に設立。国内では、スパム対策アプライアンスやウェブアプリケーションファイアウォール(WAF)などの製品で高い導入実績を誇る。現在は、ディザスタリカバリ/ビジネス継続に欠かせないバックアップ・ストレージやクラウド市場にも注力する。