富士通は、デジタルビジネスに大きく舵を切り、事業、組織の再編をドラスティックに進めている。富士通グループの保守サービス会社として設立され、トータルサービスベンダーへの転身を進めてきた富士通エフサスは、その変革のなかでどんな役割を担うことになるのか。今年4月に就任した濱場正明代表取締役社長は、「エフサスが果たすべき役割はこれからもっと大きくなる」と確信している。
ユーザーのビジネスの最前線に最も近い
──金融分野でのお仕事が長かったとうかがいました。濱場さんにとって、富士通製品の保守が源流の富士通エフサスの経営というのは、新しいチャレンジですよね。
金融機関担当の営業を入社以来ずっとやってきて、2004年からは営業とSEが一体の組織になって、その責任者も務めました。そこで手がけたプロジェクトでは、エフサスのインフラ、サポート、運用サービス部門などとはずっと一緒に仕事をしてきた仲なんです。
富士通SE子会社の大統合(16年11月に富士通システムズ・イースト、富士通システムズ・ウエスト、富士通ミッションクリティカルシステムズを富士通に吸収合併)前は富士通ミッションクリティカルの社長も務めていて、文字通り、金融、社会基盤、官公庁など、ミッションクリティカルで社会的責任の重いお客様を担当していましたが、そこでもエフサスのメンバーとしっかり協力して、東京証券取引所、みずほ銀行、NTTグループといった重要顧客の案件を一緒にやってきました。だから、メンバーもよく知っていますし、仕事の内容もわかっています。いつかエフサスの社長に就任すると予想していたわけではありませんが、違和感はないですね。
──エフサス単独としては、トータルサービスベンダーとしてのビジネスも拡大しようとしてきたのが最近の動きですが、エフサスの強みは何だと考えておられますか。
お客様のビジネスの最前線に近いところで、お客様の仕事をサポートしているということでしょうね。お客様からすると、富士通グループで一番親近感をもてる会社がエフサスだと思います。「No.1 Service Front Company」という企業メッセージを出していますが、まさにこのFrontというのがエフサスの一番の強みであり、お客様のニーズに的確に対応したサービスを提供したり、これからは、お客様自身が気づいていない課題を発見し、一緒に新しいサービスを共創していくとか、そういうことができる確率が最も高いポジションにいるんです。
グループ全体のリファレンスづくりをけん引
──富士通は、先ほどお話のあったSE子会社統合に伴い、3000人規模のSoE専門のデリバリ部隊を組織するなど、デジタルビジネスの強化を打ち出していますし、グループ全体として変革を急ピッチで進めているという印象です。エフサスのミッションはどう変わっていくでしょうか。
エフサスが果たすべき役割が、これからさらに大きくなっていくのは間違いありません。デジタル革命というと、UberやAirbnbのような新しいビジネスモデルを想像する人が多いかもしれません。それはそれで、富士通グループ全体がお客様やパートナーとの共創を含めて取り組んでいかなければならない課題ですが、一方で、お客様の従来の業務プロセスのなかにも、よりデジタル化することで高度化、効率化を図ることができる部分はまだまだたくさんあります。それはつまり、私たちの既存のビジネスの周辺にもデジタルテクノロジーを生かす余地はたくさんあって、それを確実にものにしていくことが、地に足のついたデジタル革命だということなんです。これこそ、お客様のことを一番知っているエフサスが頑張るべきポイントだと思っています。
──“地に足のついたデジタル革命”で、具体的に注力されている分野はありますか。
働き方改革です。以前から就業管理の仕組みなどはあったわけですが、デジタル革新の技術によって、より人にやさしく、効率的で、働き方を本当に変える手段になり得るようなものに進化させられる可能性があります。お客様自身に変わっていこうというマインドが芽生えているテーマですし、そうしたニーズに応えてデジタルテクノロジーを生かした提案をしていくというのはエフサスも得意なはず。いや、得意にならないといけない。
──得意になるために何をすればいいでしょうか。
例えば、当社は約60社13万ライセンス以上の導入実績がある長時間残業抑止ソリューション「IDリンク・マネージャー」(IDLM)という独自商材をもっています。終業時間になるとPCの画面にポップアップでアラートを表示するとともに、残業申請が完了するまでPCを操作できないようにしたり、タイムレコーダーを使わずにリモートで外勤者の勤怠管理ができる仕組みなどを提供しており、富士通の全社員3万5000人も4月から使い始めています。これにより、テレワーク、サテライトオフィスをうまく使うとか、いろいろな働き方改革が考えられるようになります。富士通グループ自身が、まずはそういったかたちでリファレンスになるような実践をしていくことが重要です。
──働き方改革は、単純にシステムを入れればいいという話ではないですよね。
働く環境そのものを変えていかないといけないわけです。エフサスも、「オフィスまるごとイノベーション」と銘打って、ICT環境整備を含むオフィス空間のトータルな提案をしていますが、お客様の業務をよく理解しているというのは、その際も生きてきます。
一方で、育児、介護などの事情を抱える人がしっかり働ける職場づくりはどの企業にとっても重要なテーマですから、そのための実践は、エフサス自身がこれからやっていかなければならないことだと思っています。
──社内制度ともセットで考えなければならないところです。
それももちろん検討しようと思っています。既存の時短制度などもありますが、テクノロジーの進化を踏まえると、もっと現代にあったやり方もあるかもしれません。とくにこれから多くなってくる介護世代がどれだけ活躍できるかは、日本の社会全体にとっての課題ですから、重要なテーマです。
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