富士通グループのチャネルは大きな強み
──パブリッククラウドのIaaS/PaaS市場は、グローバルでも国内でも、もはやAWSとAzureの2強という印象ですが……。
ニフティクラウドは、さまざまなオンラインゲームのベンダーやベンチャー企業などが、まずは小規模に使い始めたところからスタートしています。彼らの事業が成長するにつれて出てきたさまざまな要求に一つひとつ応えてきた結果がいまの姿なんです。単純なVM数あたりの価格はメガクラウドに勝てませんが、少ないVM数でも性能が出せるという部分については自信があります。
──投資の規模で勝敗が決まるわけではない?
クラウドビジネスでは投資力が大きな要素になるのは確かです。他の有力ベンダーに比べれば、これまでのニフティクラウドの投資はミニマムに近いでしょう。しかし、それを技術力でカバーしてきた側面がある。当社のエンジニアには、学生時代に熱中したゲームをインフラ側からサポートしたいとか、入社して最初のボーナスでサーバーを買って自宅で運用しているとか、マニアックな連中がたくさんいて、彼らこそが成長のエンジンなんです。クラウドのエンジニアは従来のエンタープライズITのSEとは全然違う文化のなかに生きています。所属企業の枠を越えて情報を交換しあったり、切磋琢磨しながら、日本のユーザーの厳しい要求に応えてきたことが、日本型のすばらしいエンジニアを育ててきたのだと思っています。マンション経営なら、当社はミニミニアパートかもしれない。しかし、外見はそうみえても、中身のコストパフォーマンスや性能は常に最新で、世界と戦えるものを出してきた背景にはそういう事情があるんです。
米ヴイエムウェアも、当社のことを世界屈指の技術力をもっていると評価してくれています。5月には、念願ともいえるAPJの「VMware Regional Cloud Provider of the Year」をいただきましたが、グローバルレベルでの競争力をもっていることの証明です。
──在任中に達成されたい目標は?
少なくとも国内市場ではナンバーワンになりたいですね。
──メガベンダーを向こうにまわしてということですね。どうやって達成しますか。
富士通グループのチャネルを活用できるのは、非常に大きなメリットです。まずは富士通グループのなかでの評価、信頼を向上させ、富士通本体、そしてパートナーエコシステムも含めて本気になる体制をつくることができれば、3年以内に達成できるはずです。そのためには、先ほど申し上げた、富士通にも、他のベンダーにもない当社ならではの強みを守り、育てて、クオータ単位で機能向上をしていかなければならないとも考えています。
ニフティクラウドが、富士通のクラウド戦略のなかで
より中心的な役割を果たしていくことになるのは
間違いありません。
<“KEY PERSON”の愛用品>自らバッグのデザインを手がける
名刺入れを自分で改造して小型のシステム手帳をつくったり、ビジネス用クラッチバッグやスマートフォンケースを自らデザイン、オーダーするなど、持ち物、身に着けるものには独自のこだわりがある。ボールペンは、ソメスサドルの革巻き。

眼光紙背 ~取材を終えて~
FJCTの社長に就任して、あらためて「ニフティクラウドに携わるエンジニアの技術力や機能開発におけるアジリティに驚嘆した」という。長年、富士通グループ内のさまざまな新規事業立ち上げで突破力を発揮してきた愛川社長の嗅覚が、FJCTの成功に向けた手ごたえを感じ取っているようだ。
「毎年120%ペースで売り上げを拡大していて、今年度は110億円程度はいくだろう」と、成長速度については一定の評価をしているが、富士通グループのエンタープライズ向けクラウドの中核を担う事業会社として、財務体質の強化、具体的にはさらなる高収益体質への転換も自らのミッションに掲げる。それもひとえに、「クラウドサービスへの投資額を増やす」ため。外資系大手クラウドベンダーを含め、競合との闘いに向け、気合は十分だ。
プロフィール
愛川義政
(あいかわ よしまさ)
1955年1月生まれの62歳。佐賀県出身。佐賀県立佐賀西高等学校卒。82年3月に、富士通九州システムエンジニアリングに入社。2009年に富士通九州システムズ執行役員、13年に同社取締役。今年4月より、富士通クラウドテクノロジーズ代表取締役社長に就任。06年からは、富士通でも新規事業開発や海外ビジネスも兼務で担当し、AsiaリージョンVPなどを務めた。趣味はゴルフ、読書、野球。
会社紹介
富士通の100%子会社だった旧ニフティの事業再編により、2017年4月、クラウドサービスを中心とするエンタープライズ向け事業を担う事業会社として誕生した。資本金は1億円で、旧ニフティ同様、富士通の100%子会社。「ニフティクラウド」のノウハウを生かし、富士通のクラウドサービス「K5」の中核を担う役割を期待されている。