注力3事業で再び成長フェーズへ
──既存事業についても教えてください。残念ながらここ数年は減収傾向が続いています。
当社は公共系と通信キャリア、一般企業の主に三つの領域に向けてビジネスを展開してきましたが、公共系では消防・防災関連システムの更改需要が一巡、通信キャリア向けの設備ビジネスも踊り場。この点はご指摘の通りですが、一方で一般企業向けのビジネスは落ち込んではおらず、ほぼ横ばいで底堅く推移しています。
──通信キャリアの第5世代移動通信システム(5G)需要は期待できませんか。
もちろん期待していますよ。今のところ2020年頃から5Gへの移行が見込まれていますが、5Gの核心部分はネットワークのソフトウェア制御にあるのです。通信機器の更新は行われるでしょうけれど、3Gや4Gでみられたような全国津々浦々に最新の通信アンテナと基地局を設置するような設備更新のニーズが、どこまで顕在化するのか、現段階では楽観できない状況です。
──では、どのようにビジネスを成長させていくお考えですか。
EmpoweredOfficeをはじめとする「サービス事業」と太陽光発電の設備工事などの「インフラ事業」、そして「グローバル事業」の三つを注力事業と位置づけています。設備工事は通信キャリア向けの設備ビジネスで培ってきたノウハウを生かせますし、グローバル事業については主にASEANへのネットワーク設備ビジネスの横展開を念頭に置いています。
当社はネットワークや関連設備に強いベンダーですが、国内の通信キャリアなどの特定分野だけに依存しすぎると、同分野の投資サイクルに当社の業績が大きく影響されてしてしまいます。そこで、太陽光などの非通信系の設備ビジネス、海外へのノウハウの横展開を推し進めることでビジネスの平準化を図り、再び成長フェーズへとつなげようと取り組んでいます。
──太陽光発電は電気の買い取り価格次第で左右されてしまいますし、ASEANの事業はまとまった売り上げになりますか。
買い取り価格は重要な要素ですが、例えば当社はスペイン系のエクセリオ社が手がける宮城県の2か所のメガソーラー案件を受注しています。太陽光パネルを約20万枚使い、総受注金額は約155億円の大型プロジェクトです。外資系エネルギー会社も日本の太陽光発電ビジネスにチャンスを見出しているほどですので、国際的にみても魅力ある市場だといえるのではないでしょうか。
グローバルについては、実は私が入社した1980年代はNEC製の無線アンテナなどがよく売れていたこともあり、当社売り上げの約4割が海外向けビジネスだったのです。こうした経緯もあり、ブラジルやタイ、フィリピンなどに拠点を置いており、16年4月には社会インフラ投資が盛んなミャンマーに現地法人を開設しました。40人でスタートしたのですが、引き合いや商談が活発であることから1年余りで180人体制へと大幅に人員を拡充しています。
既存事業の底打ち感もありますので、注力三事業を推進エンジンに位置づけ、ビジネスを伸ばしていきます。
これまでは、都心のオフィスで働けない人をバッサリと切り捨ててきた
ケースもあったでしょうが、これからは通用しなくなる。
<“KEY PERSON”の愛用品>仲間から贈られた大漁旗
「牛島丸」の名前入りの大漁旗。キューアンドエーの仲間が開いてくれた送別会で、海釣りが好きな牛島社長に贈られたものだ。「皆がこんなすばらしい贈り物を用意してくれていたなんて知らなかった」と驚きとうれしさで胸が一杯になったと話す。


眼光紙背 ~取材を終えて~
牛島社長は、駆け出しの頃からずっと「夢のもてる仕事」を志してきた。与えられたこと、言われたことだけをしているのでは、ビジネスも自分のキャリアも長続きしないと考えていたからだ。
入社まもない1980年代、割安となった秘書代行サービスが中小企業に広まっていた。このとき秘書代行のオペレータのパソコンと電話をつなぐCTI向けのネットワークを、営業担当だった牛島氏自らが設計して提案活動を展開する。理由は「カタログにある商品をただ単に販売するのは自分の考えに合わないから」。
社内の技術者からは「牛島さん、ここの設計間違っているよ」としょっちゅう指摘されたが、「顧客の課題に対し、自分で考えて解決したい」との思いが強かった。
顧客のために「自分はこうしたい」と思ったら、とことん突き進んでいくのが牛島流の“夢のもてる仕事”。社員に「夢をもて」と語りかけるとともに、自らも実践している。(寶)
プロフィール
牛島祐之
(うしじま ゆうし)
1960年、東京都生まれ。84年、青山学院大学経営学部卒業。同年、日本電気システム建設(現NECネッツエスアイ)入社。13年、執行役員兼営業統括本部東日本支社長。14年、キューアンドエー代表取締役執行役員副社長。15年、キューアンドエー代表取締役執行役員社長。16年6月23日、NECネッツエスアイ代表取締役執行役員社長就任。
会社紹介
NECネッツエスアイの昨年度(2017年3月期)の連結売上高は前年度比7.9%減の2579億円、営業利益は同29.3%減の99億円だった。今年度の売上高は同4.7%増の2700億円、営業利益は同5.3%増の105億円を目指す。「サービス」「インフラ」「グローバル」の注力3事業は堅調に伸びており、3事業の今年度売上高は前年度比14%増の1270億円を見込んでいる。