日本で最も早い時期に“IoT”を実践
──竹内会長ご自身のことについても、お話しいただけますか。
私の所属会社は、京都に本社を置く日新システムズです。親会社の日新電機がつくる制御装置向けをはじめ、組み込みソフト開発に長く携わってきました。
──会長からみた組み込みソフトの魅力って、どんなところにあるのでしょう。
そうですね。小さなモーターから巨大なプラントまで、自分の意のままに操れるところだと思います。例えば、水処理向け監視制御システムであれば、ポンプに使うモーター、温度を測るセンサなど、制御対象一つひとつは小さなものなのですが、最後にこれを統合してプラント全体を制御するのですね。
プラントなんかは危険が伴いますので、ソフトウェアのブラックボックス化は許されないことが少なくありません。業務ソフトでしたらパッケージをどこかから買ってきてとなるところも、組み込みソフトでは許されないことが多い。自動車なども、万が一、誤動作をしたときに「ソフトの中身はわかりません」ではすみません。ですので、OSから制御プログラムの一行一行すべて自分たちでつくる。すべて自分たちの掌のうちにあるところが、一番の魅力でしょうか。だからといって「業務ソフトはつまらない」と言っているわけでは決してありませんので誤解しないでくださいね。
──旧三種の神器から新三種の神器へ大きく変わったように、産業の発展に伴って組み込みソフトも変遷していくことが予想されます。どう変わっていくとお考えですか。
将来のことはつまびらかにはわかりませんが、個人的には「IoT」が一つのヒントになると思っています。
古い話で恐縮ですが、日新システムズが親会社から独立して成長していくために、「何か新しいことに挑戦しよう」と行動を起こしたのですね。そこで着目したのがインターネットプロトコル(IP)でした。80年代後半、私は3か月ほど米国へ渡り、いろいろな会社を訪問してIPの技術動向について情報を収集。さっそく会社の組み込みソフトのビジネスにIPを採り入れたのですが、今から思えば、これが当社のIoTのはしりでした。
同じIPでも、組み込みに使うときと、業務ソフトに使うときでは、制御の仕方がまったく違うのです。小さなデバイスを制御することから始まるのが組み込みソフトですが、IPのようなネットワークを介せば、一定の地域をまるごと制御できるようなる。この基盤のうえにビッグデータ分析やAI、ロボットが動く。点(デバイス)から線(ネットワーク)、そして面(地域)へと広がっていくのが、これからの組み込みソフトのあり方ではないかと思っています。
点(デバイス)から線(ネットワーク)、そして面(地域)へと広がって
いくのが、これからの組み込みソフトのあり方だと思う。
<“KEY PERSON”の愛用品>コーポレートカラーに合わせて藍色に
藍色の財布とスマートフォンケース。所属会社の日新システムズのコーポレートカラーに合わせて、「持ち物はできる限り青系統に合わせている」。同カラーは、竹内氏の入社1年目の1985年、社内コンペで決まったもので「思い出深い色」だと話す。


眼光紙背 ~取材を終えて~
組み込みソフト開発に対する情熱が、竹内会長へのインタビューの節々から伝わってきた。モーターやセンサを意のままに操り、これらをリアルタイム制御が可能なネットワークで結ぶ。すると、「大きなプラントや自動車、ロボットがまるで生き物のように動き出す」と目を輝かせながら話す。
竹内会長は、所属会社の日新システムズで、IoTという言葉が出るはるか前から、組み込みソフトとネットワークを組み合わせた事業の立ち上げに邁進してきた。そうした実績が評価され、日新システムズのプロパー社員としては初めてトップに就任。7代目社長として会社の指揮を執っている。
JASAが毎年開催している「ETソフトウェアデザインロボットコンテスト(ETロボコン)」では、「デバイスを意のままに操る組み込みソフトの魅力を、一人でも多くの人に知って欲しい」と、若い人たちへと情熱を伝えていく。(寶)
プロフィール
竹内嘉一
(たけうち よしかず)
1963年、大阪府生まれ。85年、大阪電気通信大学工学部卒業。同年、日新システムズ入社。2010年、日新システムズ社長就任。17年6月22日、組込みシステム技術協会(JASA)会長に就任。
会社紹介
組込みシステム技術協会(JASA)は組み込みソフト開発ベンダーやSIerなど、およそ170社で組織する業界団体。毎年11月にパシフィコ横浜(みなとみらい)で「組込み総合技術展(ET)」を開催したり、組み込みソフト向けフレームワークの「OpenEL」の策定、組込み技術者試験制度「ETEC」の運営、そしてETソフトウェアデザインロボットコンテスト(ETロボコン)を開くなど組み込みソフト業界の振興に尽力している。