今年創立20周年を迎えるキューアンドエー。その節目となる年に新たなリーダーに就いたのが川田哲男氏だ。働き方改革、少子高齢化など、さまざまな社会課題が存在する今、キューアンドエーは同社の強みであるサポート業務を拡大することで解決していく。そこにはAIなどの新たなテクノロジーも積極的に取り入れていく方針だ。ビジネスをさらに拡大させ、2020年に売上高300億円を目指す。
グループとの共働がビジネスを生む
──今年6月に社長に就任されましたが、最初に着手したことを教えてください。
まず、グループ会社であるNECネッツエスアイとの連携強化に取り組んでいます。10年に私がNECからNECネッツエスアイに出向し、第二企業営業本部長になったとき、隣の部署の第一企業営業本部長だったのが、現 NECネッツエスアイの牛島祐之社長です。私が中堅・中小企業を、彼が大手企業を担当し、二人三脚でやっていました。
その後、私は一度NECに戻りますが、再びNECネッツエスアイで働き、和田雅夫さん(現 NECネッツエスアイ・代表取締役執行役員会長)から、NECネッツエスアイとキューアンドエーの二社の連携、絆をもう少し形にするように、というメッセージを受けて、それぞれ社長に就任したのが今年のことです。
──二社の連携を強化するため、具体的にはどのような取り組みを行っていますか。
そもそも、当社は技術の領域に強く、音声とリモートのサポートサービスを提供しています。一方、工事会社からスタートしたNECネッツエスアイはSlerなので、私どもが担当しているコールセンター業界とはまったく異なります。生い立ちも性質も、そして社員の考え方もまったく異なります。そんな二社でシナジーを生み出すのは簡単ではないと今も思っています。そのため、ビジネスで成果を出すことにこだわらずに、お互いコミュニケーションを深めていくことを重要視しています。
幸い、私と牛島はお互いのことをよくわかっているので、若い層を含めた社員も同じように交流を深めてほしい。異なる文化に触れることで、今までとは違う刺激を受けるはずです。刺激を受けることで、人の能力は伸びていきます。人が成長するということが何物にも代えがたい成果の一つだと思っています。そして本当の意味でNECネッツエスアイと血縁関係を結んでいきたいと考えています。
──社員の交流から始まる二社のシナジーを、どうビジネスにつなげていきますか。
私もNECネッツエスアイに在籍していましたし、牛島はキューアンドエーの社長も務めました。お互い、会社の強み、課題をよくわかっています。片方の課題をもう片方の強みで補うような関係をつくっていきたいと思います。
例えば、NECネッツエスアイはお客様のヘルプデスクの領域で人手が足りない、という課題を抱えています。それに対して当社はヘルプデスクを含めたリモートサポートサービス、お客様を訪問するオンサイトサービスの二つをもっています。この点においてはすでに成果が出ており、NECネッツエスアイが担当するお客様に、当社のヘルプサービスを提案して成果につながりました。両社の強みと課題がうまくかみ合い、連携ができ始めています。
──最近はNECネッツエスアイが働き方改革に力を入れていますが、どのような連携をしていますか。
働き方改革の分野では、とくに当社の強みが生かせると思っています。例えば、自宅で働くテレワークを導入する場合、社員宅が職場となります。その際、自宅にICT機器を導入するなど、働くための環境をつくらないといけない。ここでも当社のオンサイト(訪問)スタッフやヘルプデスクサポートなどが活用できます。NECネッツエスアイが向かっている方向と、当社がもっているサービスがうまくかみ合っていますので、アクセルを思いっきり踏んで事業を拡大していこうと考えています。
ICT弱者を救済する事業を拡大
──今後拡大していくビジネス領域を教えてください。
今、少子高齢化や労働力人口の減少などが社会課題となっています。この分野でも当社の強みが生かせると考えていますので、積極的に取り組んでいきます。今後ICTやIoTがますます発展していきます。インターネット通販が広まり、電話ではなくメールでの問い合わせも増えています。PCをもっていないと買い物や問い合わせができず、社会とのつながりが非常に不安定になってしまう。加えて、家庭ではさまざまなメーカーの機器があり、メンテナンスやサポートを受ける際には、それぞれのメーカーに個別に問い合わせをしないといけない。このような流れのなかで取り残されてしまうのは、高齢者などのリテラシーの低い人たちです。今後増えていくであろう、こういった方々の困りごとを、当社なら丸ごと引き受けることができます。電話でのサポートからオンサイトサポートまで、きめ細かく対応できます。現在、PCのサポートを提供していますので、今後家電やIoTまで守備範囲を広げていくつもりです。
──サポート事業を拡大するうえで、課題となるのが人員の確保だと思います。どのような対策をお考えですか。
コールセンター事業は、労働集約型産業なので、人の確保が一番の課題となります。そして労働力人口が減少している今、人の確保は非常に難しい。そこでAIの導入を検討しています。AIを活用することで、例えばこれまで10人必要だった業務を7人でこなせるようになれば、人員確保のハードルが下がります。また、お客様のコールの接続率が上がりますので、顧客満足度にもつながります。まだ実証段階ですが、グループ会社のディー・キュービックがすでにAIでの取り組みを開始しています。
AIは経験値を積ませれば積んだだけ、使いものになり、利便性が拡大していきます。今、当社ではAIを育てている段階で、完成までしばらく時間がかかりますが、近い将来、AIがオペレータのアシストをするようになります。
またAIは実務のアシストだけではなく、研修のアシストにも活用できると思っています。今は1か月ほどの研修の後にスタッフを現場に配属しますが、ノウハウを積んだAIを活用すれば、研修期間を短縮できるでしょう。つまり、AIは人員確保のハードルを下げるだけではなく、育成面でも大いに役立つと考えています。
[次のページ]売上高を20年には300億円へ