ブランド認知度を上げる
──7月の会見では、データセンター事業で国内トップを目指すと仰っていました。目標に向けてどのような課題をおもちですか。
いろいろな課題があるなかで、一番は認知度でしょう。レノボグループはうまいんですが、わが社はブランド認知が下手で……。先日、通信企業のトップとお会いしたんですが、レノボはサーバーをやっているんですか? と言われてしまいました(笑)。ブランド認知を上げるためにブランドチェンジをし、レノボ・エンタープライズ・ソリューションズとして記者会見を開きました。これからは実力をつけながら、口コミを大切にしながらブランドを育てていきます。
──事業を拡大していくには社員の活躍が必要不可欠です。社員とはどのように向き合っていきますか?
社員にはかなり前から苦労をさせてきました。そのなかで一番おもしろくない苦労というのは、未来がみえない、光がみえてこない苦労です。闇のなかにいるというのは一番おもしろくない。私も経験があります。
上から巻き返せというのは簡単ですが、実行するのは簡単ではありません。さらに社員のマインドも大切です。社員のマインドを変えるには、まず小さくてもいいので、見本となる成功例を一つつくることです。これをまねして二つめ、三つめをつくっていく。誰の目からみても納得できるステップを一緒に踏んでいくんです。するとマインドは徐々に変わっていきます。
今は苦しいですが、HPCもHCIも成長のエンジンが明確にみえてきました。両方とも小さいですが、案件が形になってきて、これを繰り返していけばいいという見本がはっきりしました。あとはステップ・バイ・ステップで半年続けていくだけでも、大きな変革を起こせると思っています。
レノボがHPC市場の裾野を広げ、革命を起こしている。
<“KEY PERSON”の愛用品>過去ノートは本棚に
常に持ち歩いているB5サイズのノート。使い終わると本棚に収め、時々取り出して過去の自分をみつめなおす。在日期間が35年になるスチーブンソン社長が記すメモは、日本語と英語が入りまじり、まるで暗号のようになっている。


眼光紙背 ~取材を終えて~
初めて働いた企業では、海外の買収の調査などをしていたというスチーブンソン氏。役員と同じフロアで勤務していたため、若い頃から経営方法を肌で感じることができたという。「純日本風というか、家族経営のアットホームさを感じた」と語る。スチーブンソン氏の経営者としての根幹はここにあるのかもしれない。
レノボ・エンタープライズ・ソリューションズの社長に就任したが、大企業的なトップダウンの経営ではなく、社員とともに課題に立ち向かっている。
スチーブンソン氏は語る。「泥臭いといわれるかもしれないが、チームワークを組んで社員と一緒にやっていくのは独特の楽しみがある。ビジネスはマラソン。ガッツとタフだけでは途中で息切れしてしまい、ゴールまでたどり着けない」。監督というよりも先導車のように、ゴールに向けて社員をひっぱっている。(海)
プロフィール
ロバート・スチーブンソン
(Robert Stevenson)
1978年にColby College Waterville Maine USA BS,Asian-Studies & Economicsを卒業。80年にディーアイシー(旧:大日本インキ化学工業)入社、以降30年以上にわたり日本のビジネスに関わり、その間に、Documentum、EMC-DELL、VCEなどの世界的IT企業の日本法人で豊富なマネジメント経験を積む。BEA Systems、日本アバイアでは日本法人社長を務める。日本在住35年。合気道六段師範。2017年6月にレノボ・エンタープライズ・ソリューションズの代表取締役社長に就任。
会社紹介
レノボ100%出資の子会社。レノボのサーバー、ストレージおよび関連製品の保守・販売など、エンタープライズ事業に関するデータセンターソリューションを提供することに特化する。