世界主要市場でNTTデータがトップグループに入るには、M&A(合併や買収)を含めた持続的な成長が欠かせない。技術面では、AIや量子コンピュータを筆頭に「企業のビジネスを大きくトランスフォーメーション(転換)させる技術的突破口が近い将来に訪れる」と岩本敏男社長はみている。中長期の一貫した成長戦略を描くことで、M&Aのチャンスや新技術の取得をスムーズに進める。2018年はNTTデータ設立30周年の節目。グローバルで信頼されるトップブランドの地歩を一段と固めていく。
意識を五輪より向こうにもっていく
──18年が本格的にスタートしました。まずは、業況感の見通しについてお聞かせください。
20年の東京五輪に向けて、国内のIT投資は大きく落ちることはないとみています。ここ数年で日本の経営者の方々のITに対する評価や理解が一段と深まっており、ITを使い倒している中小企業も実は多い。地方の中小企業は人手不足だからこそITで業務を効率化、自動化する取り組みが増えている。私は、日本商工会議所のIoT活用専門委員長を拝命。全国の中堅・中小企業の方々と交流するなかでの肌感覚として実感しています。大企業だけが進んでいるのではないところに、ITビジネスの広がりを感じますね。
──20年の東京五輪までは旺盛なIT投資が見込めると。
東京五輪までは、日本経済はがんばれると期待しています。ただ、その先も成長し続けられるよう、意識を20年より向こうにもっていくことが大切です。宿泊、交通、決済といろいろ整備しても、五輪以降、使われないというのではダメですよね。
また、少子高齢化はほぼ変えられない流れです。日本が抱える深刻な課題の一つですが、うまくITを活用できれば、そうそう悪い方向ばかりに進むものではない。五輪に向けて整備したITを使って、人手不足を補うような仕組みづくりや、新しいビジネスの創出に役立てることで、成長の持続につなげられる。
──御社のビジネスはどうですか。
18年はいろいろな意味で「節目」の年です。まず、連結売上高2兆円超え、海外売上高比率50%を目標に掲げて推進してきた海外戦略「グローバルセカンドステージ」が、18年度で達成できる見通しです。当初は、漠然と「20年頃に達成できればいいな」と、イメージしていました。ですが、米デルのサービス部門を16年度末までにグループに迎え入れられたことなどから、大幅に前倒しできそうです。
同時に18年度までの3か年中期経営計画では、営業利益を50%増やす目標もぜひとも達成したい。15年度が約1000億円でしたので、実数では1500億円規模を念頭に置いています。各種の実証実験(PoC)を含む研究開発費(R&D)として100億円ほど投資したうえでの達成を目指していますので、ハードルは決して低くありません。
もう一つ、18年は当社設立30周年の年でもあります。まだ若い企業ですので、これからもっと大きく成長していかなければなりません。中期経営計画とは別に、私は25年を目指して成長戦略を描いています。
ITは指数関数的に進化していく
──変化の激しいIT業界にあって、25年まで見通すのは、実際問題としてかなり難しそうです。
もちろん仔細にはみえませんよ(笑)。ただ、20年で一息ついてしまってはダメで、これを見越して25年としました。R&Dにしても、M&Aにしても、中長期の成長戦略が描けていないとうまくいきません。冒頭に触れたように、日本でも中小企業から大企業に至るまで、ITなくしてはビジネスの成長はないと認識する経営者が多くを占める。こうした変化の大きい市場にあって、設立30年の若い当社が成長しない理由はどこにもありません。むしろ当社が“成長の遺伝子”をもっている限り、これからもずっと成長を目指します。
──岩本社長の思い描く「成長」とは、どのようなイメージでしょうか。
これは当社のグローバル戦略の第三段階「グローバルサードステージ」にも関係してくるのですが、海外でNTTデータが信頼されるブランドとして認知されることです。例えば「フォーチュン・グローバル500」に出てくるようなグローバル企業が、ITパートナーを選ぶとき、当社が必ず候補に入るようになる。そのためには、北米なら北米、欧州なら欧州のSIer上位10位には入らなければなりません。欧州では国によってはトップグループに食い込んでいますが、北米ではまだこれから。
将来的には全世界、どこへ行ってもNTTデータがその国・地域でのSIerトップグループに入る。ユーザーがITで課題を抱えていたら、「まずはNTTデータに声をかけてみよう」と思えるような信頼のブランドになる。これが私の描く「成長」のイメージです。
──変化の激しいIT業界だからこそ、逆にチャンスもあるということでしょうか。ただ、そろそろ既存のCPUやストレージ、ネットワークの進化も頭打ちになるとの見方も出ています。
確かに既存のCPUのアーキテクチャでは、ムーアの法則のような倍々で伸びるとは行かなくなるかもしれません。しかし、もう少し視点を引いて俯瞰してみると、また違った景色が見えてきます。情報処理は真空管から始まって、トランジスタ、集積回路へと進化し、いまでは次世代コンピューティングを担うと期待されている量子コンピュータの技術的突破口も見え始めてきました。技術的な転換を繰り返しながら、ITは指数関数的に進化していくに違いありません。
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