本社にパートナーの声を届ける
──製品構成が変わるとなれば、パートナーとの関係にも注力する必要がありますね。
入社した当時は、ファイアウォールの会社というイメージがあるともお話ししましたが、はっきりいってファイアウォールアプライアンスなどの販売が中心でした。しかし16年頃から、新しいプロダクトや顧客への販売が売り上げの多くを占めるようになってきています。これをジャパン全体にしていくには、まだ3、4年かかるでしょう。17年も売り上げは成長しましたが、何よりも、モバイルビジネスと仮想ビジネスに投資してきました。新しいパートナーを獲得しましたので、今後はドラスティックにクラウドビジネスを展開していけると思います。クラウドやモバイルの市場はまだ若く、今年も昨年を超える成長が見込めると期待しています。
また、私が入社してから、パートナーのおかげで元気な2年半になりました。そこで、われわれが日本の声を大きくして、市場やパートナーが必要とするものを本社に理解してもらい、日本に反応してもらうことでお返しするのが義務だと思っています。SMBに関しても、もともと当社はSMB専業ではないですが、パートナーからの声や市場を開拓していくための材料をまとめて、本社が日本のパートナーを応援できるような仕組みをつくっています。
──本社は、日本の市場をどのようにみているのですか。
チェック・ポイントの歴史をみると、イスラエルで設立されて、米国に進出し、その次が日本でした。チェック・ポイントのなかで、日本の重要性やプライオリティ、感情的なものも含めてつながりはかなり大きいです。日本のマーケットの声に対して、本社はすぐに反応してくれます。私のこれまでの外資系企業の経験のなかでみても、このように感じたことはありません。
例えばSandBlastの無害化機能について、日本の特別な課題を背景に、メール無害化の機能について100件ほどのリクエストがあったのですが、本社に届けると「わかりました。つくりますよ」という反応があったんです。これは通常、米国の会社ではあり得ない話です。
日本法人は設立21年目ですが、93年から営業の存在はありました。本社から、日本のビジネス、パートナーや顧客を大切にしてくれているということは非常にうれしいですね。
──本社の力添えがあるということで、ファイアウォールだけでなく、新しい領域でのビジネス展開も加速していきそうですね。
チェック・ポイントにレガシーなイメージがあるかもしれないですが、本当にこれだけ新しいことにも取り組んでいます。
レガシーということばには、いい意味と悪い意味があると思います。レガシーというと古いというイメージがありますが、実績があるということでもあります。「『IPシリーズ』は品質が高くて、壊れない」ことから、チェック・ポイントのファンは非常に多いです。レガシーなものでも、いいものをつくってきたという実績は壊したくありません。その実績のうえに立って、新しいものにチャレンジしていきたいと思います。
これからのマーケットの新しい将来をつくっていこうとしている会社として、
チェック・ポイントのことを理解していただきたいです。
<“KEY PERSON”の愛用品>テキサスマインドを忘れない
米テキサス出身のハレット社長。米国人のなかでも「自分の手で世界を変えていくといったインディペンデントなマインド」がテキサス人の特徴だという。このマグネットをオフィスの自室に貼り、「小さなテキサスをつくっている」そうだ。


眼光紙背 ~取材を終えて~
大学卒業後、日本で20年以上のキャリアを歩んできたハレット社長。日本語も堪能で、今回のインタビューはすべて日本語でお話しいただいた。
最初に日本にきたのは高校生の時。米テキサス・オースティンの高校在学時の交換留学で、大阪の高校に1年間通ったそうだ。当時の日米間の貿易摩擦や日本のバブルに興味をもち、大学で貿易を学ぶ。大学時代は、関西外国語大学に留学したそうだ。テキサス人としてのマインドを大事にするハレット社長は、「最初にきたのが大阪だったからかもしれないが」と前置きしながら、こう話す。「大阪人のオープンさやフレンドリーさから、大阪人とテキサス人はちょっと似ているかも」。
日本のパートナーの声を本社に届けて実際に応えてもらうなど、日本でのビジネス展開に本社からのバックアップは十分。「レガシー」なイメージはありながらも、それを生かして挑戦を続けていく。(宙)
プロフィール
ピーター・ハレット
(Peter Hallett)
米テキサス出身。デポー大学卒業。日本アバイア、ボーダフォン、日本テレコムなどを経て、2012年にエンピレックスの代表取締役社長。14年に同社アジア太平洋地域のセールス担当バイス・プレジデントを兼務。15年9月にチェック・ポイント・ソフトウェア・テクノロジーズ代表取締役社長に就任。
会社紹介
イスラエルのテルアビブにインターナショナル本社を置くセキュリティ企業で、1993年に設立。従業員数はグローバルで4300名。VPN/ファイアウォール製品の雄として日本国内でも大企業から中小規模企業まで幅広くシェアをもち、近年はクラウド、モバイル、IoTといったあらゆる環境に対応する統合型セキュリティ・ソリューションを提供。売上高は18億5500万ドル(2017年度実績)。日本法人は97年に設立。