業界トップになることが目的ではない
──PCAクラウドの成長の加速に向けた具体的な施策はありますか。
パートナーとの協業による間接販売でビジネスを拡大していく方針はもちろん変わりませんが、マーケティング・オートメーションなどをフル活用し、リードの発掘や案件創出の面ではPCAがもっと積極的に役割を果たしていきたいと考えています。クラウドに関心があるお客様との信頼関係をいち早く構築し、パートナーにはお客様が求めているものを売っていただくかたちをつくっていくということです。
──社長としての目標としては何を掲げますか。
現在のビジネスを着実に成長させていくことを前提として、PCAで働く人が夢をもてるような新しい成長事業をつくっていかなければならないと考えています。現場の社員と話をすると、「会社に夢がほしい」「もっと会社を成長させたい」と言ってくれることが多いんです。確かに、企業は従業員が夢をもって働ける場所じゃなければいけませんよね。
具体的にどんなものを、というのはこれからの話ですが、業務ソフトを業務や経営のマネジメントにどう役立てていくのかというコンサルティング的なサービスも考えられるでしょうし、PCAクラウドの売りである「Web-API」を活用し、他社のクラウドサービスと連携させて幅広い業務の自動化を推進するソリューションをクラウドサービスとして提供するのも現実的でしょう。後者はすでにパートナーと連携しつつ社内で実証実験をやっている事例も出てきています。いずれにしても、現在のPCAには、従来の基幹業務ソフトだけのビジネスと比べてずっと幅広い価値をお客様に提供できる可能性があるわけです。私は既存製品の開発や営業の現場出身ではなく、ユーザー側の立場だったからこそ、そうした流れをリードしやすいのではないかと思っています。
──市場シェアについてはどんな目標を置きますか。これまでは業界トップのOBCに追いつくということを強く意識されてきた印象ですが……。
OBCに追いつき、追い抜くことが最終目標だとは思っていません。お客様にいかに信頼されるかを追求し、その価値が市場に本当に受け入れられれば、結果はついてくるでしょう。シェアナンバーワンという結果をわれわれの仕事の目的にはしないということです。強みを磨き続け、クオリティナンバーワンを目指した先に、もしかしたらシェアの逆転もあるかもしれない。継続的な成長を目指すなら、質を求めることこそが最終的な近道になるというのが私の信条です。
現在のPCAには、従来と比べてずっと幅広い価値を
お客様に提供できる可能性があるわけです。
<“KEY PERSON”の愛用品>デジタルとアナログでダブルチェック
小学生の時に宿題を忘れたことが原体験となり、予定やタスクは常に手帳に書き込んで管理するのが習慣になっている。もちろん現在ではグループウェアも使っているが、「デジタルとアナログでダブルチェックする」のが自身のスタイルだ。熟慮の末に選んだ高橋書店の手帳を愛用している。
眼光紙背 ~取材を終えて~
PCAへの入社前は、近畿日本ツーリストに勤務していた。旅行代理店業界にはJTBというガリバーがいる。佐藤さんは業界内の立ち位置という意味でPCAに同じ要素を感じているという。「業界2位に縁があるようで(笑)。ガリバーを追いかけて規模を追求するだけではいつまでたっても追いつけないのはわかっている。自動車業界も同じような構図があるが、事業規模とは別の評価軸で確固たる存在価値を確立したメーカーもある。そこにPCAの成長のヒントがあると思っている」と話す。
社長への就任を見据え、常務、副社長を歴任したこの数年は、顧客やパートナーとの接触も増えた。そこでPCAの大きな武器だと感じたのが“現場力”だったという。「パートナーと一緒に、お客様のことを考え抜いて泥臭く頑張っている社員の姿をみて、嬉しかったし誇りに思えた」。営業、開発、サポート、そして間接部門も含め、全社の現場力を結集して新たな成長事業の創出を目指す。(霹)
プロフィール
佐藤文昭
(さとう ふみあき)
1963年7月生まれ。東京都出身。87年3月、中央大学法学部卒。近畿日本ツーリストを経て、2003年7月にピー・シー・エーに入社。管理本部経理部長、同総務部長・人事部長、管理本部長・総務部長などを歴任し、11年に取締役。常務取締役管理本部長などを務める。17年には副社長に。18年6月より現職。
会社紹介
中堅・中小企業向け業務ソフトウェアベンダー大手。1980年8月に、故川島正夫氏ら公認会計士の有志が設立した。2000年に東証二部、14年に東証一部上場。08年、クラウド業務ソフトの「PCA for SaaS」(現PCAクラウド)の提供を開始し、18年1月にユーザー数が1万法人を突破した。18年3月期の売上高は97億8500万円。営業利益は8億700万円。