グーグル流は「リフト&エクステンド」
――AWSやAzureをはじめ、大手のクラウドサービスは基幹システムのクラウド移行に大きな商機を見出しています。グーグルのイメージとはちょっと違う気もしますが、ここはどうですか。
基幹システムは非常に重要で、われわれも日々考えていかないといけないとは思っています。ただ、オンプレのシステムをとりあえずリフト&シフトするというのはつまらないですよね。グーグルらしい選択肢を用意することが大事だと考えています。どうせクラウド化するなら、今までのシステムのよくないところは改善してしまう「リフト&エクステンド」をわれわれは提唱しています。パートナーとコンセンサスを形成し、しっかりとテクニカルなサポートもしていくつもりです。
――パートナーエコシステムの現状についてはどう評価しますか。
お客様の業務とシステムをよく理解しているパートナーが、しっかりビジネスをつくってくれています。GCPは大手SIerとクラウドインテグレーターが軸ですね。さらに、これまでG Suiteの成長に最も貢献してくれた通信キャリアも、GCPのビジネスを始めようとしています。グーグル・クラウド・ジャパンとしても一昨年にプロフェッショナルサービスの組織をつくり、パートナーと協力して導入支援は行っています。一方で、需要に対して供給体制が追い付いていないという状況もあります。パートナーの数を増やすことも含めて手は打っていきます。
――シェアの拡大などの具体的な目標は。
ビジネスの規模というのは常に途中経過に過ぎないのでは。グーグルが目指しているのは、世界中のみなさんに、情報や優れた技術を届けて、仕事のやり方をポジティブにしていきたいということ。お客様が何かを変えたいと考えたときに、Google Cloudを真っ先に思い浮かべていただけるようになったら、目的は半ば達成しています。できるだけ多くの方にグーグルのファンになってもらう。それが目標といえば目標ですね。
Favorite Goods
ミーティングの数も多く、社内を頻繁に移動するため、社内移動用のバッグを用意している。ガジェット類などをひとまとめにざっくりと入れることができ、耐久性が高く、そして紛失しないように目立つデザインであることにこだわって選んだ。
眼光紙背 ~取材を終えて~
プロフェッショナルとしての誇りを胸に
キャリアの始まりはコンサルファームであり、もともとは業務アプリケーションの導入支援が本職だ。その後はメーカーの立場で同じ市場でビジネスをしてきた。「同業からの転職の誘いもあったが、働いていた会社の技術や製品に愛着、誇り、自信をもって売っていたので、競合に移って違う製品を売るというのは、プロフェッショナルとしての信頼にかかわるようで嫌だった」という。とくに外資系ベンダーでは、同業を渡り歩くキャリアは珍しくないが、誇り高い人だ。
グーグルへの移籍は大きな転換だったはずだが、これまでのキャリアの延長上にある仕事ではなかったからこそ入社を決めた。「コンシューマーサービスとデジタルマーケティングの会社だと思っていたが、詳しく話を聞くほどに、エンタープライズIT市場でも大きく伸びる可能性を感じた」。阿部氏は大学時代に、米国のスタートアップで働いた経験がある。「朝、目が覚めたときに仕事のことを考えてワクワクするような日々だった」というが、グーグルでもそんなふうに仕事ができるのではないかと期待は膨らんだ。それから7年、同社の不変の理念を武器に変わり続ける市場に挑んでいる。
プロフィール
阿部伸一
(あべ しんいち)
アーサー・アンダーセン、JD Edwardsやピープルソフトでのコンサルティング活動を経て、日本オラクルでグローバル企業担当の執行役員を務めた。2011年、グーグルに移籍し、アジア太平洋地域や日本を中心に、企業向け IT サービス事業を担当。16年から現職。
会社紹介
2016年設立。米グーグルのクラウドサービス「Google Cloud」を扱う日本法人。メール、グループウェア、各種コミュニケーション・コラボレーションツールなどのスイート製品「G Suite」やIaaS、PaaSの「Google Cloud Platform(GCP)」などを提供する。16年にGCPの東京リージョンを開設。公開されているパートナーは、プレミアサービスパートナー6社、サービスパートナー(リセリング)11社、サービスパートナー28社、テクノロジーパートナー30社。MM総研の調査では、国内市場におけるIaaSのシェアは7.3%、PaaSは17.1%。