エンタープライズ事業の成長で売り上げ倍増へ
――在任中の目標はどのように設定されているのでしょうか。
先ほど申し上げた市場のポテンシャルを考えると、3年から5年で今の倍以上の売り上げ規模になっていないとおかしいと思うんですね。まずは3年から5年で500億円の売り上げ規模にすることを目指してやっていこうと思っています。
――現在はゲームなどのエンターテイメント事業が売上高の9割を占めていますが、より成長の余地が大きいのはエンタープライズ事業でしょうか。
エンターテイメントが主軸であるのは変わらないが、エンタープライズも同じくらいの規模にしていきたいと考えています。エンタープライズは三本柱です。テスト、デバッグなどの検証がまず一つ。二つめはITサービスです。実は僕らは開発の部隊も持っていて、開発とテストをジョイントで手伝うビジネスもやっていきます。三つめがセキュリティーです。僕らのコネクションを生かし、米エイラデータや米シナックと協業して監視ソリューションやペネトレーションテストの分野で象徴的なプロダクトも揃えました。
とにかく僕が社内でも強調しているのは、技術×人材で事業を成長させていくということ。それが全ての成長のベースです。
Favorite Goods
「モノにこだわりがない」玉塚さんが常に持ち歩いているのは、Misfitの活動量計、スマートフォン、そして現金の“三点セット”。体力勝負の経営者らしく、体の状態を可視化し、週5回のトレーニングに取り組む。
眼光紙背 ~取材を終えて~
プロの経営者としての矜持と覚悟を持つ
デジタルハーツホールディングスの社長に就任した昨年6月以降、社内の何を変えたのかと問うと、「全て」と即答した。ホールディングスの機能・組織を大幅に縮小し、東京・港区の六本木ヒルズにあったオフィスも事業会社を置く初台に移したのは、象徴的なエピソードだ。「森ビルには悪かったけど、社長になって2秒で決断した(笑)。この規模の会社にホールディングス機能なんて必要ない。かといって畳むのは手続きもいろいろ面倒なので残したけど、ホールディングスの中核メンバーはデジタルハーツという中核事業体と一体になって現場密着でやっていくのが当たり前」。
短期間、日本IBMでコンサルを務めた経験があるとはいえ、経営者としては未経験のIT産業に飛び込むのに不安はなかったのだろうか。「小売りだろうがITだろうが、経営者に求められる能力には共通項がある」というが、一方で、「業界特有の知識とか人脈も本当に重要で、それはもう死ぬほど勉強するしかないし、死ぬほど人に会うしかない」と腹を据えている。厳しいミッションだが、「それは絶対やんなきゃダメ。プロとして当たり前だし、まあ、そういうのが好きなんだな」と話す語り口は自信に満ち溢れている。
プロフィール
玉塚元一
(たまつか げんいち)
1962年生まれ。85年、旭硝子入社。98年、日本IBMを経てファーストリテイリングに。2002年に代表取締役社長兼COOに就任。05年、事業再生や経営支援を手掛けるリヴァンプを設立し、代表取締役に。12年、ローソンに副社長執行役員COOとして参画。14年に代表取締役社長、16年に代表取締役会長CEO。17年1月にハーツユナイテッドグループ(現デジタルハーツホールディングス)顧問に就任し、同6月に同社代表取締役社長CEO、同10月からはデジタルハーツ代表取締役社長も兼務している。
会社紹介
グループの中核事業会社で総合デバッグサービスやセキュリティー事業を手掛けるデジタルハーツは、2001年設立。08年にマザーズ上場、11年に東証一部に市場変更。13年に純粋持株会社であるハーツユナイテッドグループ(18年7月にデジタルハーツホールディングスに商号変更)を設立し、純粋持株会社体制に移行した。ホールディングスの18年3月期の連結売上高は173億5300万円で、そのうち約9割をゲームの検証を中心とする「エンターテイメント事業」が占める。ただし、玉塚社長CEOの就任以降、法人向けのシステム検証やITサービス、セキュリティーソリューションなどの「エンタープライズ事業」への注力姿勢を強めている。