今年9月、ストレージやデータ管理ソリューションを提供する米NetAppがレノボとグローバルな戦略的パートナーシップを結んだ。来春には中国に合弁会社を設立し、NetAppのOSを搭載したレノボ製のストレージを中国市場向けに提供する。このパートナーシップにおけるNetAppの狙いと、同社が目指すデータ管理ソリューションについて、ジョージ・クリアン・最高経営責任者(CEO)に話を聞いた。
2社が相互に補完し合い市場開拓を狙う
――レノボと結んだパートナーシップの中には、中国に合弁会社を設立することが含まれています。レノボはストレージのポートフォリオ強化を期待していますが、NetAppが期待することとは何でしょうか。
NetAppとレノボは、相互に補完し合える関係だと考えています。例えばプロダクトでみると、NetAppが強いのはストレージとデータ管理の分野。一方、レノボはコンピューティングに強みを持っています。国や地域別にみると、NetAppは日本やオーストラリアを含めた西側に強いのですが、レノボが強い中国やラテンアメリカでは、NetAppはそれほど強いガバナンスを築けていません。
この2社がパートナーシップを結ぶことで、NetApp単体では強くなかったエリアで、新規のお客様を獲得することができます。また、サーバーを購入するお客様にストレージやデータ管理ソリューションをアプローチすることができ、新たなチャンスが生まれます。つまり、レノボが持っているチャネルを私たちが活用できるようになることを期待しています。
――中国に設立する合弁会社ですが、操業はいつごろの予定でしょうか。またNetAppから何人ほど、スタッフを派遣するのでしょうか。
来年春ごろには会社として運営できるかたちになると思います。役員については2社の合意のもと、すでに任命しています。また積極的に経営陣を探しているところでもあります。NetAppにはすでに中国メンバーチームというものがあり、彼らが合弁会社のスタッ
フとなる予定です。まずは150人を派遣する計画です。
――合弁会社で開発した製品をグローバルに展開するのですか。また今後、他国でも同様に合弁会社を設立する計画はありますか。
グローバルマーケット向けの製品開発ではなく、あくまでも中国市場向け製品を開発することが、この合弁会社の目的です。中国は独自の要件があり、また市場規模も大きいです。この市場向けにフォーカスし、十分満足のいくプロダクトを生み出すことが目的です。他国への展開については、現在、計画はありません。今回の合弁会社がどうなっていくか見守りながら、今後について決めていこうと思っています。
データ活用のあり方 ビジネスありきで考える
――2017年に開催した「NetApp Innovation 2018」で、ストレージ専業ベンダーからデータ管理ソリューションベンダーへと舵を切ることを発表しました。データ管理の手法として、他社もオンプレミス、パブリッククラウドにあるデータを一元管理できるソリューションを提供しています。その中で、ストレージベンダーであるNetAppの強みを教えてください。
NetAppは事業を始めて26年が経ちます。この中で累計何万社というお客様に対して、データをどう保護し管理していくのが最適であるかを、お手伝いしてきました。今、どの業界でも重要となるキーワードは「デジタイゼーション」だと思います。データとソフトウェアを組み合わせて、より良いビジネスを行っていく、ということです。例えば、製造業では新製品の開発スピードを速めるために、シミュレーションや3Dモデリング、3Dプリンターなどさまざまなテクノロジーを活用しています。そして、そこには膨大な量のデータが存在します。
NetAppはストレージやデータ管理に関して、実績、パートナー、テクノロジーを持っています。ストレージやパブリッククラウドにデータを格納し、保持する仕組みを持ち、さらにデータを可視化することで、コントロールすることができます。アプリケーションとデータをつなぐことによって、素早く、新しいアプリケーションを開発することができます。NetAppのデータ管理ソリューションは、統合化したデータ管理だけではないのです。
例えば、コネクテッドカーでは、すでにNetAppのテクノロジーが活用されています。ここではたくさんのソフトウェアが使われていて、まるで小さなデータセンターのようになっています。このソフトウェアとNetAppのストレージに格納してあるデータをやり取りすることで、車がよりうまく走れるようにしています。複数のコネクテッドカーから送られるデータを一元化し、モニターすることで、予測、予兆に役立てることもできるわけです。
お客様は今や、さまざまな方法でデータを生成しています。そして、このデータをいろいろなかたちで活用しながら、ビジネスにインパクトをもたらしています。データをきちんと取り込み、そして保護できるように、NetAppとしてもツール群の幅を広げていきます。
――今、どんどんデータが増加しています。全てのデータを集め、分析するのはやがて困難になるのではないでしょうか。
その通りです。今、データは大きく、そして量も増えています。さらに意思決定のスピードアップも求められています。意思決定のスピードを速めるためには、自分たちにとってどのデータが必要で、どのデータが必要でないかを、ふるい分ける必要があります。
データの選別ですが、どのデータが特定のビジネスと関連性が強いか、言い換えればビジネス部門にとってアクセス頻度が高いデータは何かを特定することができれば、必要なデータを選別することができます。こういった情報をAIに学習させることで、インテリジェンスを高めることができます。
データを活用し、成功している企業には共通項があります。一つは、データを部門が管理する資産ではなく、企業の資産だとみていること。データの活用に関して、ビジネスありき、人ありきの考え方をしていること。とにかくデータを集めて、という手法ではなく、自分たちが解決したい課題に対して、どんなデータが最も関連性が高いかを、ビジネスアナリストやデータサイエンティストを介して特定することなどです。
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