サブスクリプションによるビジネス革命は途上にある
――SIerがクラウドビジネスに取り組むのが一般的になりつつあるとはいえ、オンプレミスを中心とした旧来型のシステム構築も根強く残っています。ビープラッツでの対SIerのビジネスは、どのような感じですか。
ここにきてSIerからの問い合わせが増えています。急増です。マイクロソフトの「Office 365」を採用するユーザーが増えてきているのが、要因の一つだと考えています。全社員が使うような重要なツールですから、社員を採用したり、退職者が出たりすると、必ずと言っていいほどライセンスの出し入れがあります。それを適切に管理しなければいけません。もちろん、SIerはOffice 365のほかに、さまざまなクラウドサービスを提供しています。多くは一人当たりの料金が月額数百円で、そのための管理に時間を割くのは現実的ではありません。管理を自動化するようなプラットフォームが必要となります。
ユーザー企業にしても、クラウドサービスの提供企業に関係なく、社員の増減に合わせてライセンスを管理したいわけです。SIerがまとめて管理してくれると非常に助かります。また、IoTの普及により、通信SIMを扱うSIerが増えました。大量のSIMを提供するわけですが、明細は1枚ごとに必要です。こうした管理にも、当社のプラットフォームが活用されています。
――所有から利用への流れは確実ですから、サブスクリプションのプラットフォームが必要とされる分野は広がりそうですね。
お伝えしたい事例があります。コニカミノルタの「Workplace Hub」で当社のプラットフォームが採用されました。Workplace Hubは、複合機とPCサーバーが融合したようなサービスで、サーバー内にさまざまなビジネス向けアプリケーションが入った形で提供されます。まさにワークプレイスのハブというわけですが、アプリケーションを使うかどうかはユーザー次第で、使用した分が課金される仕組みです。
――富山の薬売りのイメージですね。とはいえ、サブスクリプションのモデルとしては、一歩進んだ形だと思います。
複合機はもともと利用した分のコストが発生するので、Workplace Hubはその延長線上にあります。このようにサブスクリプションのビジネスにはさまざまな可能性があるということです。
――ところで、今年で節目の50歳になるそうですが、サブスクリプションへの注力は継続するとして、これを機に事業として新たな展開をお考えでしょうか。
私は20代で会社員としてビジネスを学び、30代で起業家になろうと考えていました。商社の子会社を設立して、代表取締役に就任したのは30代前半。そして、36歳の時に当社を設立しました。40代で目指したのは、起業家から社会から認められる経営者になること。設立から倒産の危機は何度もありましたが、49歳で株式上場を果たしました。50代も経営者として頑張りますが、新たな事業も立ち上げたいですね。とはいえ、サブスクリプションには、生涯をかけるくらいの気持ちで、今後も取り組んでいきます。
Favorite Goods
アディダスのビジネスリュック。軽くて機能性の高いスポーツメーカー製のビジネスリュックを愛用している。会社案内をはじめ、多くの資料を自ら制作している藤田社長。リュックを開くと、それらの資料がぎっしりと詰まっている。
眼光紙背 ~取材を終えて~
元祖“サブスクを日本で一番知っている男”
サブスクと略しても違和感がないほど、サブスクリプションという言葉は広く認知されるようになった。特にクラウド全盛のIT業界では、サブスクリプションとビジネスは密接に関係している。
ところが、サブスクリプションの本質が理解されているかどうかは怪しい。本質を知らずに、やれ「月額課金」だとか、「ストックビジネス」などと言っているビジネスパーソンがいかに多いことか。
藤田社長は知っている。「サブスクリプションの本質はビジネス革命。単なる決済や課金の手段ではない」
とはいえ、ビジネス革命との説明で納得できるビジネスパーソンは少数派に違いない。本質を理解してもらい、ビープラッツ製品のサブスクリプションプラットフォームを効果的に導入してもらうには、どうするべきか。思案の末に編み出したのが、ドリル形式の「サブスクリプションプロジェクトノート」だった。
「子ども向け通信教育の教材にヒントを得て、ノートに記入していくことでサブスクリプションに取り組めるように構成されている」。なんと、内容だけでなく、イラストやレイアウトデザインまで自ら手掛けたという。定価は1500円。
「販売はしていないが、定価が付いていると大切に使ってもらえると思って(笑)」。ずっと使ってもらうことも、サブスクリプションの大事な要素である。
プロフィール
藤田健治
(ふじた けんじ)
1969年生まれ。東京工業大学卒。92年に三井物産入社。日本ユニシス、シマンテックなどのIT分野を担当。2002年、IT系ECサイト販売網の構築などを手掛けるライセンスオンラインを設立。代表取締役として、4年間で売上高50億円超の事業を創出。06年に三井物産を退職して、ビープラッツを設立し、代表取締役に就任。
会社紹介
「サブスクリプションを全てのビジネスに」というミッションの下、サブスクリプションのためのプラットフォームを提供している。主力分野は、IoT、クラウド、通信の3分野。2018年4月、東証マザーズに上場。